第27章 最後の聖獣きたーっ!
170.砦の奪還のおまけ(1)
空を駆ける黒豹はさすがに目立つ。いっそ黒いことを利用して、夜間の侵入に変更した方が良かったかもしれない。まあ、今回のオレは囮だから目立つ方がいいけど。
人数が多いジークムンドの班が動き始めた。撃ち合いが始まるが、オレが作った結界を上手に使って戦っている。今回の戦の目的は砦の奪還であり、あくまでもケガ人が出ないのが大切だ。今後も戦いは数回に分けて各地で行われる予定だから、都度ケガ人が出るのは困る。
盾代わりに使うよう、薄い水色の結界をいくつか置いてきた。地面に突き立てる形だが、薄い水色の部分に隠れれば、銃弾を弾くのだ。小さめに数多く設置したが、全面覆うのはやめた。銃弾がすべて弾かれると、向こうが戦い方を変える可能性が出てくる。侵入するジャック班の危険が増す。
ばんばん撃ち合う姿を上から見つめ、ひらひらと身をくねらせて泳ぐコウコを従えて、砦の上空へ移動した。飛んでくる弾が想像より少ない。聖獣の恩恵に見えるよう、ヒジリの下に結界を張ったのだが、当たる音が予想の半分以下だ。
敵の攻撃が緩いけど……変な場所でいきなり反撃されたら嫌だな。フラグじゃないぞ。絶対に違うからな! 不安から挙動不審になり、やたらと下を覗き込んでしまう。オレの姿に首をかしげたコウコは、久しぶりの大きな自分に興奮したらしい。合図をする前に、勢いよく火を噴いた。
「あぁっ!! コウコ、合図してないのに何してるんだよ」
『主人、もう遅いわ』
塔の上にあった国旗が勢いよく燃えた。どうしよう、全力で喧嘩売った気がする。ある程度のところで、砦の放棄を条件に停戦しようと考えたのに。国旗は完全に燃えてポールだけになってしまった。
『主殿、聖獣がやったと公表すれば良いのではないか?』
オレが予定していた計画を知るヒジリが宥めるように提案する。聖獣は自由な存在で、立場も王族より上だから許されると思う。そんな気遣いを見せるヒジリの首に抱きついた。
「ありがと」
礼を言った眼下で、裏の木戸を開けて入り込むジャック達に気づく。見回すと少し離れた木の上でライフルを構えるライアンがいた。上空からだと状況が把握しやすい。ジャック達の班は侵入を担当するため、危険が大きい。彼らの存在から目を逸らすのがオレの役割だった。派手に動くか!
「コウコ、あっちの木を燃やして。それからヒジリもあの辺の地面を……こう、ぶわっと下から持ち上げてひっくり返してみて」
目を引くための騒動なので、実際に戦闘行為として成り立つかを考える必要はない。ただ騒ぎになって、彼らを混乱させればいいのだ。そう思って提案したが、ヒジリがぐるると唸った。
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