108.こっちは勝手に楽しませてもらおうか(3)
「バーベキュー?」
「なんだそれ」
「野営方式……」
ざわめきが広がる。今度は興味を引けたらしい。最初の出だしを間違えたオレとしては、ここから巻き返したいところだ。料理当番の奴らもカウンターの向こう側から様子を窺っていた。
「宮殿の広間で騎士や貴族、兵士は大きな倉庫みたいな建物で食事をするから……オレ達は外だろ?」
場所の確認をする。部屋が足りないという体のいいお断り文句で、外に放り出されるならやり方もあるってもんだ。多少の寒さもしのげるし、ここは奴らが羨むようなパーティーにしてやんぜ!
「野営の時のテントを張る! 手伝ってくれ。豪華料理を用意するし、一緒に食べて騒ごうぜ」
「キヨ、お前は呼ばれる側だから大広間だろ」
「そうだぞ。勲章授与がある」
ジャックやジークの指摘に、にやりと笑った。
「勲章より、背中預けた仲間とのパーティー優先だ! オレをのけ者にするんじゃねえっての」
「ぷっ……お前らしい」
吹き出したライアンに続き、数人が笑い出した。釣られる形で全員の顔がほころんでいく。肩車から降ろしてもらいサシャに礼を言う。しかし逆に頭を撫でながら「ありがとうな」と礼を言われてしまった。
「子供なんだから素直に祝われてりゃいいのに」
憎まれ口を叩きながらも嬉しそうなジャック。ジークも「まあボスらしいけどな」と苦笑いして髪をくしゃりと乱した。他の連中も近づいて来ては口々に声をかけてくれる。
「……よし! 準備だ」
照れ臭くなって逃げるように会場予定地へ向かった。兵士が集まる倉庫に近い広場は、荷馬車の搬入に使われるため
国のために戦った奴に対する礼儀がなってないけど、これがこの国の貴族のやり方だ。兵士達も当たり前だと思っているのか、倉庫に向かう足を止めることはなかった。
「土魔法って、ヒジリの得意技だったな」
今は食料調達に出かけた黒豹は頼れないので、自分でやるしかない。魔法陣とやらは知らないが、オレの知る前世界のビヤガーデン会場を再現することにした。地面を平らにするのが先決だ。
「こんな感じ……かな」
魔力を練って高めてから、平らな地面をイメージする。コンクリート敷きの平らな硬くて丈夫な地面を思い浮かべて魔力を流していく。膝をついて地面に手を付けたら、魔力が流れやすくなった。魔法を使うときに対象物に触れると、想像しやすくなって無駄が減る。
いきなり大量の魔力を放出した所為か、魔術師らしきローブ姿の奴らが数人走ってきた。
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