06.平和ボケのツケ(4)

「名はキヨヒト、12歳」


「白金の髪と紫の目で、顔は女性っぽい美人。華奢な感じか」


「背はこのくらいで…、ああ、先日お前が銃を貸した子だ」


 ライアン、ノア、ジャックが口々に外見的特徴を示し、頷きながら赤毛の青年レイルが記憶していく。


 同時に左耳のカフスを弄って、念話を繋いだ。魔力を込めることで通信機としての機能を果たすカフスは彼の商売道具だ。聞いた話をそのまま流しながら、部下に捜索を指示した。


 気が向いて顔を出した最前線で、丸腰の子供に銃を貸したことを思い出す。銃を回収しに行った時は眠っていて、まさかの異世界人だと聞いた。


 あの時は戦場で丸腰というバカに呆れたが、異世界から落ちたばかりなら何も手にしていなかった状況も納得できる。外見は整っていたし異世界人と知られたら、好事家のコレクションとして注文が入ったのかも知れない。



 3ヶ所ほど思い浮かべた人攫いの拠点を、脳裏で整理していく。シンカーの市場で攫うなら、縄張りの関係から拠点は2つに絞られた。


 甘えん坊だとか不要な情報まで口にしていた3人は一息つき、ジャックが眉を顰めて続ける。


「あと何より重要なのが、あいつは」



「「「竜だ」」」



 最後ハモった彼らに、レイルは「はっ?」と聞き返した。そのくらい珍しい単語を聞いたのだ。


「……だから、キヨヒトは『竜』なんだ」


「早く見つけないとマズい」


 レイルの顔色が青ざめる。さきほどまで他人事とのんきに構えていた彼の表情が強張った。


 キヨヒトは手元から消えた銃が気になり話を遮ったが、あのときに説明を終えて置けばよかったとジャックは頭を抱えて唸る。その隣でノアも冷静さを失った様子でおろおろしていた。ライアンにいたっては「探しに行ってくる」と外へ駆け出す始末。


 この場にいないサシャがいたら、さらに騒ぎが大きくなっただろう。


「……その、キヨヒトは……竜の習性を?」


 説明は終えたんだよな? こわごわ確認するレイルへ、ノアとジャックは異口同音に否定した。


「「いや、知らない(んだ)」」


 絶句したレイルが頭を抱えて、ようやく吐き捨てた言葉は―――。


「……全力で保護する」だった。

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