62.圧倒的勝利による弊害(2)
収納魔法の口を開いて取り出したダイナマイトを核にしたため、思ったより派手な花火になった。飛び散る火の粉がこちらまで落ちてくる。
「ちょ……キヨ、熱いっ!」
「悪い! つうか、火は通過するんだ?!」
自分でも混乱して落下する火を避けた。花火を真上に打ち上げたので、ジークムンド達に被害がなかったのは幸いだ。落下する火の粉がぶわっと急激に燃え上がって散る。本物の花火みたいに、粉々に散って温度がない光だけが落ちてきた。
「コウコ、ありがとう」
『……主人ったらドジなんだから』
彼女が燃やしてくれたらしい。綺麗な火花が降る戦場は、一方的な展開になっていた。飛び出したジークムンドを筆頭に、傭兵が塹壕から撃ちまくる。視点が低い塹壕からの銃撃は、ほとんどが敵の腹部や足に当たった。
逆に敵から撃つ銃弾は、塹壕の壁にぴたりと背を預ければ当たらない。左右から挟み撃ちも想定外だった敵が右往左往して、混乱の中で数を減らしていた。
残存した敵の中で戦えるのが20人を切ったところで、合図を送った。
「はい、終了~! 降参する気があるか、敵に確認して」
オレの指示に変な顔をするが、ジャックが通達に出てくれた。両側の傭兵が攻撃をやめたことで、敵は挙動不審になっている。状況がつかめないのだろう。すぐに降伏勧告が行われ、両手を挙げて武器を捨てた連中が一箇所に集められた。
手足を撃ち抜かれて戦闘不能な連中を集めても、45人ほどか。銃を突きつけて反撃を封じるジークムンド達が手を上げて挨拶する。
「よ、ボス。さすがの手並みだ」
「お疲れ、ボス」
「皆にケガはない? ケガしてたらすぐに治療してね」
応じながら大量の絆創膏もどきを手渡す。受け取った傭兵が首をかしげているが、理由がわからずオレも首をかしげた。
「なに?」
「いや、こんな高級品を傭兵に惜しみなく使うなんてさ」
「ケガしたら使う物なんだから、大事に保管しててもしょうがないでしょ」
肩を竦めて、傭兵の横をすり抜ける。後ろで礼を言いながら頭を下げる彼に続いて、絆創膏もどきを貼り付けた数人からも礼を言われた。
オレが思っていたより、傭兵の扱いって酷かったんだな。
「貴様のようなガキが指揮官だと?!」
元気いっぱいに噛み付いてきた敵兵に、ちょっと感動した。戦争映画で観たけど、本当にこういう対応しちゃうのか。自分達が負けたのに、今は囚われの身なのに……立場考えずに発言するなんて、映画の中でしかあり得ない。現実でそんなバカな奴はいないと考えてたけど、いた。
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