36.準備のために全部出す(2)
「セイ、その笑顔はシフェルみたいだ。やはり師弟は似るの………」
「「やめて(ください)」」
不本意ながらシフェルとハモってしまった。
「キヨ、今回は安全な部隊に配置します」
当初は最前線で戦力とする予定だったが、さすがに皇帝陛下の番となる存在に死なれては困る。そう匂わせたシフェルに、迷った末に頷いた。
役に立ちたい反面、生きて帰る義務があるのも理解できる。これが本当に12歳の子供だったら我が侭言うんだけど、ここはぐっと我慢だ。
「わかった。任せる」
素直な受け答えにびっくりしたのか、シフェルはすこし止まった。なんだ、失礼な奴だな。
「転移は何時くらい?」
「あと2時間くらいですね」
壁際に立つ、立派な柱時計を確認する。あと2時間あれば間に合うか。
「空いてる部屋があれば貸してくれる? 荷物を整理したいから広い場所」
収納魔法の口を開いて見せれば、あっさり了承された。扉を開くと、部屋の外にいた騎士に声をかけて戻ってくる。どうやら手配してくれたらしい。
「ではこちらでどうぞ」
「私も!」
一緒に行くと表明するリアムをエスコートして歩き出すと、シフェルの手に首ねっこを掴まれた。猫の子じゃないんだから。何してくれてるの。じたばた手足を動かすと笑いながら下ろされた。
「陛下は着替えて、後からお越しください」
「あ、そうか。バレちゃう」
女の子の
「また後でね、リアム」
ひらひら手を振ると、残念そうにしながらも素直に頷く少女がいる。侍女が慌てて着替えの準備に立つのを見送り、先に部屋を出た。リアムの寝室から5分ほど歩かされる。思ったより遠くに来たな。
広い宮殿敷地内を縦断した先は、倉庫のような場所だった。吹き抜けの天井は3階分ほどあるだろうか。柱がなくて壁と天井だけの広い建物の床は固めた土だ。訓練場として使用できそう。
「どうぞ」
言われて収納魔法の口を開いた。手を突っ込むのではなく、掴む手の内側に物が現れるような現象は、いつ見ても不思議だ。自分が使えるようになっても仕組みがよくわからなかった。
袋状態のものを想像して、中に手を突っ込むならわかる。だが収納魔法の口となる線から物が出てくる際、手は中に入らないのだ。大きな物だったりすると、引っ張ってる途中で落とすこともあった。意外と使い勝手が悪い。
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