240.後から入れても出汁出るよね(2)
ここからは早い。オレの指示がなくても、ジャック班の傭兵達は動いてくれるからだ。ライアンが器を並べ、ノアが注いでいく。ジャックとアーサー爺さんが並べた奴隷達は、不安そうだった。ここまでお膳立てされても、ご飯がもらえると思ってないところが可哀想。どんな目に遭わされたのやら。
まあ同情するなら飯をやれ――というわけで、手早く味噌汁を並べた。サシャが1人ずつ手渡していく。受け取った奴隷は目を輝かせるが、すぐに口を付けなかった。その理由は叱られるから? もしくは取り上げられるからかも。どっちにしろ、オレはそんなことしないけどね。
「皆、ご飯もらった? 貰ってない人がいたら手を挙げて」
「なんだ、その変な習慣は」
手を挙げて示すように促すと、サシャが驚いた顔でこちらを見た。ジャックは肩を竦めただけ。こっちには手を挙げる所作がないようだ。
「まあいいや。後でね」
ここで説明に費やす時間が惜しい。
「この味噌汁は熱いから、火傷しないように。誰も取らないからゆっくり食べること! 食べ終えてもっと欲しい人は、器を持ってここに並ぶ。わかった?」
叫んだ内容を理解したのが半分くらい。残りは首を傾げて、隣の奴に話しかけたりしている。どうやら種族や国が違う人が混じっているようだ。
「もう一度繰り返すぞ」
今度は獣人が使ってた言葉で同じ内容を話すと、また数人がきょとんとしていた。彼らに近づいて話しかけると、身振り手振りで返事がある。だがここからが異世界人チートだ。
オレは全部の言語が話せるんだぜ? この世界だけだが。おかげで全員と話をして内容を理解させた。その間に数人が食べ始め、おかわりの列もすぐに出来た。
食べる元気があるのはいいことです。うんうんと頷いて、この場を任せて離脱した。まだ地下牢に数人いるが、自力で出られないほど衰弱してるらしい。
階段を降りていくと、鼻を摘む臭さだった。オレが知ってる臭いに例えると、家畜小屋か? 糞尿や饐えた臭いが充満して、鼻で呼吸することは諦めた。
『主、結界ってこういうとき使うんじゃない?』
なくなくない? と奇妙な言い回しを覚えて使うブラウに言われ、慌てて結界を張った。そうだった、臭いを遮断すれば良かったんだ。後ろについてくるノアも一緒に包み、思わず深呼吸した。
ここは人間が住む環境じゃないけど、それ以前にネズミも遠慮したい場所だと思う。不潔とか通り越して、雑菌と悪臭の温床になっていた。
「この状況でケガ人を放置か。最低だな」
ぼやきながら、ノアの案内に従って奥の牢を覗いた。
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