209.思ったより重い計画(2)
「俺も
「ん?」
奇妙な表現じゃないか? 爺さんじゃなくて、祖父さん……血族か! 嘘、それじゃ東国の宰相、侯爵家じゃん。
寝転んだベッドから飛び起きると、苦笑いしたジャックも身を起こした。指先で外を示すので、後をついてテントを抜け出す。見張りをしてた連中が興味を示すが、ひらひらと手を振って無視するよう示した。
ついてきた聖獣はヒジリのみ。ブラウは影の中で、コウコとスノーは寝ている。マロンに至っては、外を走りに出かけていた。
大木の根本に腰掛ける。同じように大木に背を預けて立つジャックの顔は見えない。話が聞こえない距離で、護衛のベルナルドが銃を腰に陣取った。そういや、同じテントだっけ。今更ながらに、他の人がいる場所で話す内容じゃなかったと反省する。
「悪い、気遣えなくて」
「子供が気にするとこじゃねえ」
あっさり許してくれるが、ノアやライアン、サシャが動かないのは知ってるから? 聞いてもいいか分からないので、ジャックが話すまで待つことにした。少し風が冷たいな。足元にライオン寝したヒジリを手招いて抱き締めた。
「寒いか?」
きっかけを探してたのかも。そう思うくらい、どうでもいい会話から始まった。さっき「祖父さん」と言った時点で、因縁を話す気だったんだろう。そうじゃなければ、濁せばよかったんだから。仲間と認めてくれた証拠かな。
「うん、でも平気」
「さっさと話して暖かいテントに帰ろうぜ」
そう告げたジャックは、自分の生い立ちを簡単に説明し始めた。感情を抜いた話は、どこか他人事のような冷たさで響く。
東の国の宰相を務める祖父、跡継ぎの父、その長男として生まれた。早くに実母を亡くしたが、後妻に入った義母は優しかった。腹違いの弟と妹の双子がおり、幸せな幼少期だったらしい。自分の未来も、いずれ継ぐ地位のための勉強も苦にならず、すべてが順調だった。
ある日……王族が無茶な要求をするまでは。そこでジャックの口調が刺々しさを帯びる。殺しきれない感情が滲んで、ぎりりと歯を食いしばる音も混じった。
双子の弟妹は、美しい義母と顔立ちがそっくりだった。父が宰相を継ぐ頃、王子の話し相手として弟が王宮に呼ばれた。いずれは側近として育てたいと言われる。宰相を継ぐジャックと一緒に王族を支えると笑って出向き……冷たい物言わぬ姿で返されたのだ。
ジャックは兄でありながら、遺体との対面を許されなかった。斑らに赤い布に包まれ無言の帰宅となった弟を見ることなく、遺体は荼毘に伏された。
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