11.拘束状態での拝謁(10)
ひらひら目の前で手を振られ、抱きかかえて連れて行かれたことを思い出す。豪華で掃除が大変そうな広間で、すごい美人に出会った。何か言葉をかけられて………。
「……美人だった」
それしか覚えていない。
オレの感嘆まじりの呟きに、目を見開いたあと……シフェルはくすくす笑い出した。
失礼じゃないか? 引きこもり寸前だったオレにしてみれば、おそらく初恋なんだぞ? つうか、本当に初恋かも。
今まで好きだと思った人はいた。お付き合いしたいと望んだ相手もいる。でも、この感情とはレベルが違う。熱量が違うというか。
恋は奪うもので、愛は与えるものだ――かつて聞いたドラマのセリフだったか。それに当てはめるなら、オレは今まで恋しか知らなかった。
皇帝陛下にお会いして、人生観が変わる。
映画で、主のために尽くす騎士や他人を庇って死ぬ奴を見て「どうしてそんなバカなことするんだ?」と疑問しか感じなかった。でも、今……皇帝陛下を狙う輩がいたら、盾になって守るだろう。
己の命と引き換えになっても、あの人が生きてくれるなら構わないと思う。
「また、会えるかな」
何か功績を残せば会えるだろうか。切ない溜め息混じりに呟いたオレの頭に、ぽんとシフェルの手が乗せられた。
「浸っているところ申し訳ありませんが、これから陛下とお茶会です」
「お、お茶会…………!? 陛下、と? オレ? え!?」
驚きすぎて立ち上がると、覗き込んでいたシフェルの顎に頭がぶつかった。
「うぅ……痛い」
「ッ……痛いのはこちらです!」
キレたのか、シフェルの拳骨が頭に落ちた。
ちょ、そこ…今ぶつけたところ。同じ場所を狙った拳骨に、目尻に涙が滲む。生理的な涙は止める術がなくて、子供っぽいが涙が零れた。
「シフェル、許してやってくれ」
ひょいっと抱き上げる逞しい腕の持ち主が仲裁にはいる。
「ノア……痛い」
涙が落ちたのが悔しくて、顔をノアの胸に押し付けた。 ついでにゴシゴシ拭いて涙を誤魔化す。
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