143.フラグ回収、狙撃されてました(2)

「コウコはどうしたの?」


『ブラウと出かけました』


 それなら平気かと安堵の息をつき、肩の上にスノーを乗せた。影を通過する聖獣は、オレと契約しているせいか。影の中を通って結界を無効化する方法が使えた。


「無事ならいいけど……これ、何」


 スノーが内側に持ち込んだ金属を摘まんでじっくり眺めた。横から見ていたレイルに渡すと、手の上で転がした後で肩をすくめる。


「狙撃用ライフルの弾頭がつぶれたやつだ。これは性質が悪いぞ。殺しに来てる」


「いや、ライフル使う時点で殺しに来てるだろ」


 意味の分からない主張に首を横に振れば、レイルが「お前は授業で何を聞いてたんだ」と呆れ顔になった。続いて「ライアンの奴、授業に手を抜いたのか?」とぼやく。


 大事な仲間が疑われるのは心外なので、むっとした顔を作ってレイルを睨みつけた。


「ライフルは長距離を撃つから、弾頭は硬い素材が多い。結界……というか、硬いものにぶつかっても潰れずに突き刺さるんだ。お前の結界の硬さが凄いのは別として、こんな形に潰れるのは先端が平らな弾を中距離で撃った証拠だ」


 つまり、体内で骨に当たって弾が潰れることを想定してる。しかも潰れるような柔らかい金属となれば、鉛など中毒性がある金属の可能性が高い……確実に殺傷能力優先で撃たれた弾という意味か。


 オレの知識が間違ってなければ、確かに殺しに来たんだろう。控室の狙撃では、そんなたちの悪い銃弾使われなかったんだが?


「陛下、キヨ……狙撃がありました」


「うん、銃弾見つけた」


 シフェルの報告に振り返れば、彼は複雑そうに状況を説明した。結界の中に閉じこもってしばらく、夜会はダンスや雑談という情報交換の場として機能していたらしい。銃声が響いて数人が倒れたが、当たった者はいない。ケガ人というより、驚いて失神したお嬢様や奥様が出た程度の被害だった。


 風がない夜だったこともあり酔いを醒ます者がテラスに出たため、ガラス戸がいくつも開いていた。騎士達が調べたところ、狙撃は結界内の皇帝や王族を狙ったものと判断され、中の状況が把握できずに混乱を極める。そこへ、何も知らずにのこのこと顔を出したので、心配していた貴族の数人がへたり込んだ。


「夜会ってこんなに狙われるの?」


 毒殺未遂2回、狙撃2回の現状に首を傾げれば、リアムが何でもないことのように否定した。


「いや、通常は毒殺か狙撃どちらか1回程度だ。今日はずいぶんと大盤振る舞いだと思う」


「ああ……うん。そうなんだ」


 オレとしては「狙われたことなんてない」と言って欲しかった。狙撃の弾を見ても平然としているところから、いやな予感はしてたんだ。そうか、狙われるのがデフォなわけか。


「きっちり排除してやんよ!」

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