58.師匠に認められた弟子っぽい(2)
「あのさ、大きくって……こんな感じの奴だよね?」
少し離れたところでコーヒーの片づけをしているジークムンドを指差した。顔を上げたレイルが、じっと見てから頷く。
「ああ、似てるな。特に身体の大きさや強面なところが」
「だよな! じゃあ、オレが殺したぞ。死体が出てないのか?」
「……おまえが?」
なぜに疑う……。納得できない気持ちで睨みつけると、レイルが肩を竦めて説明を始めた。
「アイツはいつも卑怯な手を使って生き延びてる傭兵なんだ。常に手下を連れ歩いて、2~3人で襲ってくるから、囲まれると厄介だ。本当に息の根を止めたのか」
「うん、指揮官の側にいた。手下もいたぞ。オレがコイツの胸を刺して下がったところで、手下にナイフを投げて、2本目を腹にぶち込んだ。直後にジャック達が手助けに来たから、手が空いたオレは胸のナイフの回収がてら首を切った」
胸から抜いた仕草の直後、首を切る真似をして見せた。確実に息はしてなかったはずだ。言い切ったオレに目を見開いたレイルが、「お前もナイフは一人前か」と感慨深そうに呟いた。
にへらっと顔が緩む。今のって師匠に認められた弟子っぽいよな。前世界で中途半端にあれこれ放り出して生きてきたけど、異世界で本当に人に恵まれたと思う。褒めてくれたり撫でてくれたり、オレを真剣に育てて叱ってくれる奴もいるなんて。
怖いくらい恵まれてる。何より、可愛い嫁さんが出来る! 見限られて捨てられないよう、これからもがんばろうって気持ちがわいた。
後ろから蛇が絡み付いて、しゅるるると不気味な音を立てながら舌を見せてくる。冷たい肌にどきっとしたが、意外と触り心地いいな。つうか……赤い。
「コウコ?」
『小さくなれば主人が撫でてくれるとブラウに聞いたの』
間違ってない。確かに小さくなったブラウが実家の猫みたいにくねると、つい誘われて撫でた。腹部とか、腹部とか、腹部……あれ? 腹しか撫でさせてもらってない。
「そっか、小さくなれると便利だよな。持ち歩き出来るし」
『そう? なら普段は小さくなってるわ。主人の体温が気持ちよくて』
嬉しそうに頬に舌を這わせてくる。ぞくっとしたのは内緒だ。聖獣に性別はなくても、一応女性っぽいタイプだから気にすると可哀想だった。
「その蛇は?」
顔を上げたレイルは、オレの首に絡まった赤い蛇に気付いて眉をひそめる。まあ、前世界でも爬虫類大好きで首に蛇を絡めるような奴は、ちょっと……かなり変わり者分類だから仕方ない。出来るだけコウコが気分を害さないように説明しないと。
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