05.猫じゃなかった(3)

「はあ……」


 凄い、のか。いや、数が少ない種族だと判明しただけのこと。特に能力が優れている属性という話じゃない……たぶん。


 考え事をしながら聞いているので、どうしても返事が中途半端になる。しかし彼らも驚いているらしく、特に咎める声は上がらなかった。それどころか、どこか同情する目で見られている。


 もしかして、竜は盛大な欠点がある……とか? 


 チート能力与えた引き換えに、大事な部分をマイナスされたんじゃないかと不安になった。


「猫と竜は似ているところがあって、どちらもゆっくり瞬きすると落ち着く習性がある」


 なるほど。


「竜は気が荒い。だが、それは戦闘時のみで普段は大人しい」


 へえ。


「珍しい属性だが、牙と違って尊敬の対象になるから安心しろ」


 ん? 牙と違って?


 ノア、サシャ、ライアンの説明に頷いていたが、最後の部分に引っかかる。


 牙だと尊敬されない? 眉を顰めて少し考え、素直に尋ねた。


「牙は尊敬されないのか?」


「さっき会ってわかっただろう。奴らは蛇と竜の間の習性を持つ。周囲を不快にさせる魔力を放つし、嫌われるような性格をしている奴が多い」


 ジャックの説明は端的だが、なんとなく理解できる。


 あの気分の悪さと恐怖感は、どうやら魔力の種類? 質? が原因だったらしい。だから魔力や気配に敏感なオレは極端に反応したのだろう。


 逆に魔力に疎い属性の奴は、牙が傍にいても気にならない可能性がある。性格が悪いのは、アラクネの態度を見れば一目瞭然だった。嫌がってるのを承知で触ろうとしたくらいだ。


 彼女が牙の一般的なタイプだと仮定したら、お近づきになりたいタイプじゃない。



 竜と蛇の間……つまり、東洋でいう『龍』みたいな感じか。


 蛇という属性はなかったから、動物としての蛇が習性として近い可能性がある。少なくともアラクネと名乗る彼女の言動から蛇に近い感覚を受けた。


 オレが知る龍はこう……もっと畏怖と尊敬の対象だった気がする。大雨降らして地上を沈めたりする龍神の話もあるが、雨乞いに応じて恵みの雨を降らせてくれるイメージの方が強かった。


 そう、圧倒的な強さと畏怖で崇められる神様。


 牙が自動翻訳で龍にならない理由は、ここにあるのかも知れない。勝手に言葉を翻訳してくれるチートは、勘違いするような誤訳を避けたのだろう。


 でも、なぜ蛇じゃなくて牙? の理由はわからない。

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