179.革命の大義は我にあり(3)
飲み干した空の水筒を収納へ放り込み、ついでに中から取り出した予備の武器をばら撒いた。
「おい、キヨいいのか?」
言葉にしないが、ライアンは反逆の可能性を考えているらしい。渡された武器を民衆がこちらに向けたら? そう考えた彼の懸念は最もだ。
「別にいいよ。こっちに向けても、オレの結界に弾かれる。そもそも聖獣相手に戦う愚か者がいるの?」
圧倒的戦力はすでに見せつけてある。最強の聖獣が見える範囲で3匹、さらにヒジリ自身の言葉で5匹が契約したと言い切ったのだ。聖獣コンプリート・マスターにケンカ売る馬鹿はいないだろうし、攻撃を弾けるので関係なかった。
『主殿、普通は大丈夫だと思っても心配するものぞ』
「なるほどね」
ヒジリのふかふかの黒い毛に埋れながら、傭兵全員に結界を張っていく。いつの間にか全員駆けつけていたので、マロンもこっそり合流していた。何、普通の軍馬ですみたいな顔でしれっと交じってるのさ。誰も乗せてない馬なんて、野良馬だろ。
コウコはさっさと移動して、城の塔を尻尾で叩き折った。崩れる瓦礫から逃げる人々を尻目に、さらに炎で追い討ちをかける。このままでは国民達が到着する前に戦が終わりそうだ。
「コウコ、やりすぎ注意」
『あら、平気よ。まだ獲物は残してるもの』
王子を捕らえるのは民衆の役目だ。これで民主主義国家……まあ無理か。この世界でそこまで改革するとしたら、オレが付きっきりで概念を教えて一生懸ける必要がある。フランス革命の時だって、優秀な先導者がいたから移行できたわけで。
オレ、優秀な指導者は無理だから。リアムと甘い新婚生活する予定だから、他国の内政干渉してる余裕ないしね。
ブラウが鼻歌まじりに空を走り、城門を切り刻んで粉々にした。やっぱり過剰戦力な気がするわ、うん。
コイツらいたら、中央の国だって抵抗勢力の貴族を物理で一掃できそうだもん。精神攻撃にやり返すより、効率的な気がしてきた。シフェルが聞いたら止めに入りそうな思考が過ぎる。
「おおお! 恩を返せ」
「俺たちの誇りを取り戻せ」
どこぞの世紀末アニメみたいな台詞が飛び交うが、無視しよう。青猫がニヤニヤしながら、状況を楽しんでいる。コウコはゆらゆらと空を舞いながら、時々飛んでくる矢をきっちり弾き返していた。ターゲットを誤らないあたり、器用な尻尾だ。
『主殿、攻め込むか』
「被害が広がる前に、さっさと城の天辺を落としてくるか」
にやりと笑って提案すると、ヒジリが好戦的な唸り声をあげて同意する。一気に空を駆けて城の屋根を突き破った。
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6/19より公開しました新作です!
『聖女と結婚ですか? どうぞご自由に』
公爵令嬢アゼリアは、婚約者である王太子ヨーゼフに婚約破棄を突きつけられた。
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