320.尻を舐められる公開プレイ?
するりとヒジリはガラスを擦り抜け、オレだけ尻から落下した。どんと大きな音で強打した腰が痛い。くそ、なんでヒジリは通り抜けたんだ。しかもガラスに鼻ぶつけた。
「痛いぃ!!」
「大丈夫か? 可哀想に。兄様のお膝においで」
自分で兄様言うな、シン。でも抱き抱えられて宙に浮いていると、痛みが少し楽かも。うつ伏せでソファベッドに転がされた。さすがに脱がせて確認しようとする手は止める。鼻血は出てないので、自分で撫でておいた。
「確認はいい」
「だが、ひどい傷になっていたらどうする」
「ただの尻餅だろ、せいぜいが打撲くらいだから」
うっかり尻を見せてBがLする世界に突入したらどうする? オレはフラグは積極的にへし折るタイプだぞ。
『主殿、何をしておるのだ』
「お前こそ、何してんだよ」
さっきの痛みで浮かんだ涙を乱暴に拭おうとしたら、悲鳴をあげた侍女に優しく触れる形で拭かれた。ぐいっと拭くと顔が崩れるとか。化粧って面倒で時間がかかる上に、維持も大変なのかよ。女性の努力は最大限に認めて褒めようと心に誓った。
化粧品って、土産に買おうとしたら食料品より高いし。フライパンと香水が同じ値段だった時はびっくりしたよな。女性の美って金がかかってんだから、その分褒めたりプレゼントで応援しないといかん。
ヒジリは不思議そうにオレを眺めた。
『我と同化しておれば、擦り抜けられたであろうに』
眉を寄せるヒジリの言い分によれば、オレがヒジリを信じて同化すれば良かったらしい。それでするりと通過出来るというが……。
「そういう話は事前にしておいてくれ」
『何故だ?』
「人間は普通、ガラスを擦り抜けないの。ヒジリが抜けられる話も知らなかったから、ぶつかると思って身構えるだろ」
順番に説明したところ、ヒジリは納得した。なるほどと呟く。そもそも「下に行くなら」と言われた時に、よく意味を確認するべきだったか。ヒジリはそのまま真下に飛び降りる意味で使ったのかも知れない。
「今後は確認してくれ」
『ふむ、そうしよう。主殿には申し訳ないことをした』
「悪いんだけど、廊下経由で下に連れてってくれる?」
承知したと頷く黒豹の背中に乗り直す。心配そうなシンを残し、笑いすぎて呼吸困難になったレイルを放置して部屋を出た。腰が痛いし、尻はもっと痛い。馬より上下運動が激しい豹の背中は辛い……ん?
「ヒジリ、治してくれよ」
『そうであった。では患部を出してもらおう』
「……ここで?」
すでに廊下に出てしまった。腕の弾傷なら、捲って噛んで舐めてもらって問題ないが……人目が気になる廊下で尻を出して、ベロンと舐められる姿を公開プレイ。あ、無理。
「今は無理」
『すぐ終わるゆえ、はよう尻を出せ』
「やだ」
『痛いのは好きではないであろう?』
「痛くなくてもやだ」
ぷんと横を向いたところで、追いかけてきたヴィオラが「いやん」と身悶えた。何か用があったらしいが、すっかり忘れているようだ。
「卑猥な会話が素敵! べろんと出して、舐められちゃってよ」
「王女様としてどうなの!? ヴィオラ姉様なんて嫌いだ!!」
豪速球で彼女の萌えを潰す。嫌いと言われて崩れ落ちるヴィオラを放置し、近くにあった空き部屋に移動した。尻の治療は簡単で、骨や神経に異常がなく傷口もないので、ベロンと舐められて終わった。
文字通り舐められるだけ。ちょっと猫科の舌は痛かったけど、ぶつけた尻は腰に近い部分だった。蒙古斑の出るあたりな。おかげでヴィオラの期待する、卑猥な光景はなかった。
「よし、国王陛下の元へ急げ!!」
颯爽とヒジリに跨り、廊下で泣き崩れるヴィオラを置いて走り出す。廊下の階段も一っ飛びなので、やたら早かった。
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