233.任せたオレが悪かった(2)
椅子が落ち着かないのは、床で食事をさせられた所為。だからちゃぶ台サイズにテーブルの脚をカットして、床に座るお茶会にした。もちろんベルナルドやジャックも付き合う羽目になる。
驚いた顔をしたものの、セシリア夫人も一緒に座った。マロンは器用に前脚を畳むが体は大きいままだ。玄関先で床の絨毯に座る不審者集団――アーサー爺さんは大声で笑って、胡座をかいた。地位があったわりに馴染むのが早い。
「キヨ様、足が……ぐぁ」
最初に痺れたのはベルナルドだった。そうだと思った。ジャックは傭兵時代の生活で床も慣れちゃったし、爺さんは平然と馴染んでる。ふんわりしたスカートの下で何度も足を崩したり向きを変えたセシリアもセーフ。
オレ? 日本人だからね、平然と正座を……くぅ、痺れてなんかないんだぞ。ブラウ、その爪で突いたら殺す。本気で皮剥ぐぞ。視線で脅したら、にやにやしながら下がった。気をつけないとやられるな。
「小公子殿は何をお待ちか」
おうふ、アーサー爺さんの中でオレの呼び名が「小公子」になった。それって王子にも使えそうじゃん。
「うーん、情報」
レイルが戻るのはまだ先だ。だけど、そろそろ……別口が来るはず。
「中央の国、メッツァラ公爵家御当主がお見えになられました」
「ほらね」
シフェルが追いついてくる頃だと思った。ジャックの父で現宰相の相手をしてきたシフェルは、にっこり笑うが……笑みが黒い。
「何か、あった?」
「ええ、それはもう。親族に美しい妙齢のお嬢様がいるそうで、側室にと勧められました。私には最愛の妻がいるのでと断ったところ、今度はキヨに紹介したいと言われましたので、皇帝陛下のお気に入りなので無理と一刀両断にしたのです。そうしたところ、北の王族であるレイル殿でもいい、無理ならベルナルド殿はどうか、と。孫ほど年齢が離れているのに、どれだけ強欲なんでしょうね」
にこにこしながら、不要な情報を息も切らずに吐き捨てたシフェル。ここへ向かう道中、警護した騎士には特別手当と休暇を与えてくれるよう、リアムに頼もう。じゃないと鬱になること請け合いだ。
「あ、うん。ご苦労様」
「東の王族について尋ねたら愚痴が大量に吐き出されまして、そこから波及してジャック殿の悪口も大量にお聞きしましたよ。耳に休暇を与えたくなるくらいには」
その最後の言い回しはオレの世界でいう「耳タコ」現象か。シフェルのストレスが、目の前でプシューと湯気を噴いている。遮ると火傷するやつだ。
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