233.任せたオレが悪かった(3)
「大変だったね、シフェルだから任せられたんだよ」
にっこり笑って受け流そうとしたオレは、思い出して収納から大量の化粧品を取り出す。先にリアムに渡す予定だったが、この際順番を変更させてもらおう。
オレンジのアイシャドウはリアム用じゃないし。クリスティーンに似合うと思って選んだ色の化粧品を並べ、お値段が高い方から2番目の基礎化粧品も用意した。基礎化粧品の意味がわからず、レクチャーしてもらったオレは手短に商品説明をして、シフェルの前に差し出す。
「……もう少し増やせませんか」
苦労に見合わない。文句を言うシフェルへ、追加の道具をいくつか渡した。化粧筆というらしい。ずっと綺麗に化粧された筆の名称だと思ってたが、お化粧の時に使う筆なんだな。口紅や目元の色を塗るのに使うんだと。
女性がデートで奢ってくれと言うのも理解した。美容室や化粧品、服に靴、バッグとあれこれお金をかけて見栄えよくしてくれてるのに、床屋で紙幣1枚でカットしたオレが横に並んだら怒る。飯代くらい負担しろと言いたくなるだろ。今なら理解できるぞ。
女性は褒めて美しくして、釣った魚にも餌を与えて長生きしてもらうのが、恋人や夫の勤めだ。
「これは柔らかくて、肌に優しいと聞いた。あとはこっちもいいな。触るとすべすべする紙だ。口紅を少し押さえるんだって」
製造所の方の受け売りをそのまま伝え、こちらも上納させていただく。もうね、カツアゲされるガキの気分ですわ。早く終わってくれ。
「確かに品質もいい。これで手を打ちましょう」
シフェルはアーサー爺さんに一礼して、ベルナルドのいた場所に座った。真似して胡座をかくあたり、抜け目ないな。ベルナルドは痺れた足で後ろに転がって、そのまま悶えてるため放置された。
「そんで、何かわかった?」
「ええ。王族のやらかした事件は多岐に渡りすぎて把握できていないようです。こうなったら被害者に名乗り出てもらった方が早いですね」
「やっぱそうなったか」
うーんと唸る。聞いた範囲でもひどいが、さらに加速してたはずなんだよ。ジャックがいなくなった後に、誰も止める人がいない王族は増長しまくった。貴族の一部が南の国に逃げてたのも驚きだし……南の味噌屋、昔は東の国で味噌作ってたらしい。道理で和風食材があちこちに飛び火してるわけだ。
技術者が逃げたんだから、東の国から技術はダダ漏れ。逃げた先の南の国もひどいので、近々逃げ出す算段をしていたというから……もうね。聖獣に認められし一族の云々はやめたらいいと思…………うん?
「聖獣が認めないと国が消えるって、本当に世界の法則なのか?」
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