191.朝食は目玉焼きだろ(2)

 鍛冶屋が多い土地なら、良質の金属はたくさん手に入るだろう。金属錬成が出来るマロンがこの南の国の聖獣なのも、土地に関係あるのかな。もしかしたらマロンが聖獣だから、この国は鍛治が発達した可能性もあるのか。


 卵が先か、鶏が先か。そこでふと気づく。宮殿で卵料理が出たことあったけど、もらった食材に卵はない。収納なら割れないのに、どうしてだろう。


「うーん、ないと思うと余計に食べたい」


「どうした? キヨ」


 ようやく痛みから立ち直ったジャックが首をかしげる。唸るオレの姿に、言ってみろと促す彼に尋ねた。


「卵料理が食べたいんだけど、卵って分けてもらわなかったよな〜と」


「「当たり前だ(ろ)」」


「「ボスだからな」」


 また仲間外れか? 異世界人だから常識ないって言われるんだろう。むっとしながらノアの解説を待つ。いつも一番丁寧にオレの疑問を解決してくれるのは、オカンだけだった。


「ノア、ちょっといいか」


 ジャックが手招きして事情を説明すると、ノアは奇妙な顔をした。オレが何を理解できていないか、分からない。そんな顔は久しぶりだった。事前情報として、オレが考える朝食用卵の話をする。


「あのさ、オレのいた世界だと毎朝卵を食べるんだ」


「家で鶏を飼ってたのか?」


「いいや?」


 会話が噛み合わない。なぜ卵を食べるのに、家に鶏が必要なんだ? そりゃ、飼ってりゃ生みたて食べられるけど。早朝から鳴きまくって煩いから、都会じゃ無理だな。


「この世界で卵って貴重品なの?」


 宮殿では普通に食べてたけど、もしかしたら高級品で贅沢な食べ物だったりして。


「一般家庭でも鶏がいれば、卵は手に入る」


「つまり?」


 互いに何が言いたいのか、何が引っかかってるのか不明のまま、見つめあって首を傾げた。息もぴったり! なのに、会話はすれ違う。


『主ぃ、この世界の卵は日持ちしないんだよ』


「え?」


 まさかのブラウの発言に、卵の賞味期限を脳裏で思い浮かべる。確か……常温はダメだけど、冷蔵庫なら2週間は生で食べられたんじゃないか?


 そのまま伝えたら、目を見開いた傭兵達の顔に「ボスの非常識が始まった」と書かれていた。


「生で食ったら死ぬぞ!」


「うそっ! 卵って安全な食べ物じゃん」


 殻に包まれて、さらにカラザ? とかいう白い紐で固定されてるから、黄身は割れない清潔な食べ物だろ。お値段も優等生だと聞いてるぞ。


 前世界で料理しなかった奴の情報だが、スーパーで売ってたりテレビで見たのは覚えてる。大丈夫、ボケてないから!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る