211.B級ホラー映画じゃん(2)
「……そう答える時点でガキなんだよ」
ずっと口を挟まなかったレイルがぼそっと指摘し、ライアンが笑い出した。サシャが慌ててライアンの口を押さえて「しー」と静かにするよう言い聞かせる。
大騒ぎしてるけど、今はまだ夜中だ。近くのテントの奴は絶対に起きたぞ。あとで謝らないといけない。そんなことを考えながら、大きな欠伸をひとつした。
ベルナルドの頭を抱えるように顎を乗せて運ばれるうち、テントに着く頃には意識が眠りと現実の間を行き来し始める。横たえるシーツが冷たくて、きゅっと手足を縮めた。するりと温もりが足に絡み、その後で腕の中にも入り込んだ。
あったかい……そのまま目を閉じ、温もりに擦り寄った。
「襲撃だ!」
「くそっ、見張りは何してた?!」
叫ぶ声と銃声に飛び起きる。足に絡みついた青猫を蹴飛ばしてしまった。すまん……拾い上げて不満そうなジト目の猫を撫でる。
「キヨ、寝ぼけてる場合じゃねえ」
「先に出るぞ」
ジャックとライアンが飛び出し、銃を握ったノアがオレの警護に残る。数歩先で、剣を抜き小銃を抱えた物騒な前侯爵閣下が仁王立ちだった。普通、守られる側の肩書と立場の人だよな?
サシャは、同じテントのヴィリから何かを取り上げている。
「やめろっ!」
「これは使わせない」
ヴィリの頬を殴って奪ったのは、立派な爆弾でした。ご苦労様。熟睡中に叩き起こされたヴィリが、怒り心頭で取り出したところを、気づいたサシャが阻止した形だ。
「ヴィリ、爆破は禁止」
言い渡してからサシャの手にある爆弾を収納へ放り込む。
「ああ……傑作なのに……後で返せよ」
「わかった。先に迎撃してこい」
右手に青猫を抱き上げたまま、ひらひら手を振って追い払う。怒りのぶつけ先を敵にしてくれたら、少しは落ち着くだろう。相手が可哀想? そんな意識はなかった。必要以上の迎撃をされたくなければ、寝てる時と食事時は邪魔するな。あと恋人との逢瀬に乱入したら、即、殺されるから。
そのくらいの覚悟で挑め。はふんと欠伸をして、青猫を床に下した。敷かれた足元絨毯の上に靴を用意して、手早くベストを羽織る。寝る前に枕元に用意する習慣だが、予備の銃弾やカートリッジを含め、発煙筒などが装備されたベストは便利だった。
「準備できましたかな? 我が君」
「もう面倒だから、キヨって呼びなよ……準備オッケー」
枕の下に手を入れて銃を握る。手に馴染んでしまった硬い感触を撫で、くるりと手の中で回した。問題なし。テントから出ると空が少し白んでいた。早めに片付ければ、まだ寝れそう。
そんじゃ行こうか。
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