230.黄泉がえり、って言わない?(5)

「ありがと。よくわかった」


 あの我が侭ボディと取り巻きは抹殺してよし。薄着で働かされてる奴は全員保護だ。


「足枷のついた奴隷は保護、あとは要らない」


 無慈悲な宣告に、ブラウが普通猫から巨猫サイズに膨らんだ。ぺろりと前脚の爪を舐めて、にたりと笑う。化け猫感すごい。


 ヒジリも一回り膨らんで鋭い牙を見せながら唸った。白い雪とのコントラストが綺麗な黒豹は、回り込む様に連中の向こうへ歩いていく。雪の少し上を歩くため、足跡が残らないのがファンタジー感あふれる演出だ。


『主様、僕も』


「スノー、ドラゴンサイズにならないと埋もれて踏まれるぞ」


 白いからな。雪と同じ色だと指摘され、スノーは焦ってマロンにしがみついた。


「咬み殺すなよ」


 注意だけはしておく。気をつけないとヒジリやブラウはやり過ぎる。一息で殺すなんて勿体ない。悪い奴はそれなりの死に方してもらわないと、周りがまた納得しないぞ。


 ヒジリは奴隷の保護に走り、青猫は巨大な爪で死体泥棒と奴隷の間を切り離した。飛びかかられて逃げた男達は全部で4人。転げるようにして雪の上を逃走開始だ。


『僕だって役に立ちます』


 マロンが気合を入れて追いかけようとするが、手綱を引いて止めた。


「マロン、こう言う時は先輩に譲るのが礼儀だ」


 見てみろと顎で示した先、ゆったりと巨体をくねらすコウコがぐあっと口を開いた。直後、逃げた連中を炎の洗礼が襲う。背中も尻も焦げて丸出しになった連中にぬるい眼差しを向けていると、スノーが『えいっ』と止めを刺した。


 足元が完全に凍りつき、抜けなくなったのだ。肥満体型の主犯格の男が、半分ほど持ち上げた足が凍りついて悲鳴をあげ転がった。あの体型ではバランスが取れないだろうけど、スノーのタイミングが酷かった。


 えげつない。死体泥棒にかける情けはないけどね。さらにヒジリが爪で襲い、ブラウが首を落とした。あーあ、殺っちゃったよ。


「あん? あれは……公爵家のバカと、取り巻きの子爵やら伯爵のガキじゃねえか」


 眉を顰めたジャックの呟きで、死体泥棒の正体が判明した。東の国の貴族が王族の死体を盗む理由がよくわからんが、蘇生できる自信があったのか?


 にやりと笑ってオレは提案した。


「この連中も、王族と一緒に蘇らせてさくっとやる? 黄泉がえりの数が多くても少なくても、労力は大差ないから」

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