230.黄泉がえり、って言わない?(6)
噛み殺さないよう注意したら、首を落とされた場合、オレは怒った方がいいのか? だがそれも理不尽か。
「まあ恨まれてるだろうから、誰かが欲しがりそうだが」
複雑そうに呟いたジャックが、雪を掻き分けて近づいてきた。
「お前って残酷だよな」
「そうかな、オレの知ってる法律だとコイツら死刑だもん。だから殺しても心が痛まないし、意外と冷めてるのかも」
「かと思えば孤児を保護なさる。キヨ様は優しいお方です。さすがは支配者の指輪が選んだお方」
阿吽の呼吸でベルナルドが褒める。なんだよ、まるで褒められるために、オレが自己批判したみたいじゃん。指から取れなくなった呪いの指輪、改め支配者の指輪はキラキラと今日も綺麗だった。
聖獣5匹、支配者の指輪、ドラゴン殺しの英雄……オレを縛る鎖が多すぎる気がする。
「ところで『黄泉がえり』ってなんだ?」
「蘇るはわかる?」
ジャックの疑問へ返すと頷く。あれれ、読みと意味が大体同じなのに、通じないのか。黄泉という単語がいけないのかも知れない。あれは仏教の考え方だから、宗教がないこの世界だと説明が難しいのだ。それで自動翻訳されないんだろう。
「蘇ると同じ意味の異世界語」
「……お前、説明が面倒になったんだろ」
ああ、指摘されてしまった。ジャックの無慈悲なツッコミに顔を両手で覆い、オレは大きく溜め息を吐いた。
「それより、どれを生かすの?」
「全部持ち帰ってからでいいんじゃないか?」
安全になってからのこのこ顔を出すレイルが口を挟み、言われて気付いた。そうか、今の状態なら死体だから収納で運べる。聖獣達に指示を出して運んでもらい、死体を麻袋に入れて放り込んだ。食べ物も入ってるから避けたい方法だが、まあ収納空間は特殊らしいから平気だろう。
「回収終わり、ひとまずジャックの家か?」
「いや、おれのところに来い」
アジトがある。レイルの言葉に裏がありそうで、オレはうーんと唸った。だがアーサー爺さんのところに運ぶより、レイルのアジトの方が牢とかありそう。蘇らせた後も腐るだろうし、貴族の館はまずいか。
「わかった」
「よろしいのですか、キヨ様」
「うん。オレはレイルを信じてるから」
騙されるんじゃないかと告げるベルナルドに、ウィンクして白い息を吐く。騙されても不都合はないんだ。切り抜けて逃げる実力はあるし、オレから未集金を回収したい情報屋が攻撃する意味はない。無事に中央に帰ってこそ、オレの価値があるんだから。
「早く行こうぜ、寒いから」
とりあえず今は温かい緑茶が飲みたかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます