第33章 断罪劇、いっちゃう?

260.居心地いいからいいけどね(1)

 どう反応したらいいのか。オレは今、檻の中にいる――。


 温泉旅行を無事に終えたところで、宮殿からの連絡で一時帰ることになった。というのも、旅行で行きたい場所リストを用意していたリアムのために、もう少し旅行したいと考えていたのだ。だが、お呼び出しがあれば無視も出来ない。


 で……檻の中。ごめん、説明を省き過ぎた。何から話したらいいのか、オレ自身も混乱してるんだ。ぼやきながら、オレは目の前で腕を組むレイル相手に、あれこれと言い訳していた。


「お前の容疑は、皇帝陛下誘拐だぞ」


「あ、そうなんだ」


 皇帝陛下自ら出向いた誘拐なんて、どうやって事件化したのかな? やたら豪華な牢なのは、腐っても王族だからだ。オレが皇帝陛下に懸想して、無理やり襲おうとした……となっているらしい。まあ、懸想した辺りは間違いない。


「誰が騒いだの?」


「トゥーリ公爵だ」


「とろり蒟蒻ぅ?」


「ふざけてると放置するぞ」


 王族服を着用したレイルは、一応オレを助けてくれる気があるらしい。というのも、実家扱いの北の王家が「攻め込んででも助ける」と表明した。間違いなくシン兄様だな。騒動を大きくする名人だ。あの突発性ブラコンは後天的だが、たちが悪い。


「シンはちゃんと抑えた?」


「今は我慢させてる。兵士を集めろと言ったら、金貨ばら撒いて集めたぞ」


「……マジか」


 やりそう。想像ついちゃう。でもって、友好関係を結んだはずの北の王家から抗議が入るのを承知で、そのは動いたのか? それとも義理の第二王子なんか見捨てるだろうと甘く見た可能性もある。


「リアムはなんだって?」


「ウルスラに様子見するよう言い含められて、おかんむりだ」


「謝っといて」


 両手を合わせてごめんねすると、レイルが近づいてオレの上着の襟を掴んだ。ぐいっと引き寄せられる。


「ちょ、囚人への乱暴は」


「うるさい!」


 牢の番兵が怒鳴られるが、レイルも手を離した。襟の裏に何か紙を忍ばせてきたけど。どうやら裏事情はばっちり探れたらしい。この紙に書かれた情報をもとに、敵を追い詰める予定だった。だからオレも大人しくしていたし、レイルもわざわざ王族の格好をしたわけだ。


 国として正式に抗議してますよと示すのは大事だからね。ウルスラやクリスティーンが必死に説得し、リアムも我慢している。そうして用意された豪華な牢で……オレは良い香りのする料理を引き寄せた。


「悪い、食事中だったんだけど食べていい?」


「お前はそういう奴だよな。豪胆というか、鈍い」


 ひどい評価だな。ムッとしながらスープに口を付け、よく味わってから飲み干した。あらやだぁ、毒殺する気ぃ? これ毒が入ってるじゃない! ブラウの口真似をしながら、オレは残ったスープを綺麗に飲み干した。

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