225.ようやくお土産買いに行ける!(2)

 無言で手を出すと、胸元から取り出した封書を渡された。赤い封蝋がおしゃれだ。これって映画で見たけど、実際に貰うと開け方に困るな。封蝋を剥いだら割れるし……できれば残しておきたい。ブラウの風の刃の応用で、うまく上部だけ細く切り落とした。


 中身を出すオレは封筒を収納へしまう。そこらに置いて風で飛んだり、誰かに踏まれたら泣くぞ。中に入っていた便箋は白くてシンプルなもの。透かしで端に紋章が入っていた。皇族御用達感がすごい。


 ドキドキしながら目を通すと、中身はひたすらに可愛かった。オレがいないと寂しいから始まり、お土産はいいから早く帰ってきて欲しいと続く。オレの作った料理や菓子が懐かしい、養子にする手筈をした報告、新しい名前もちらりと書いてあった。そして最後にまた、キヨがいなくて寂しいと綴ってある。


 ぎゅっと抱き締めると、便箋から柑橘系の心地よい香りがした。あ、これ……リアムの匂いだ。鼻の穴を最大まで広げて匂いを堪能していると、シフェルからツッコミが入った。


「変態みたいですよ、あ……変態でしたね」


「……変態でもいい。ほっといてくれ」


 罵られても気にならない。呆れ顔のジャック、肩をすくめるレイル、ベルナルドは微笑ましげに髭をさすっていた。それ、お爺ちゃんが孫を見る目だぞ。


 匂いを密封して逃さない方法……ビニール魔法かな。ラップ? 唸りながら封筒を取り出して便箋をしまい、上からラップしてビニール袋に入れる。密閉をイメージしながら収納へ戻した。


「リアムの補充が出来た」


 口元がだらしなく緩んでる自覚はあるが、戻し方を忘れたのでご容赦願おう。


 よしっ! あれこれ片付けて帰るぞ!


「リアムの土産買うぞ!」


 あ、本音と建前が逆だった。どっちも大差ないガッカリ具合だが、まあオレだしね。カッコつかなくても仕方ない。


「……これが本当に世界を救う異世界人で、5匹の聖獣の主人かよ」


 こらそこ、本音が漏れてるぞ。機嫌がいいから怒らないけどな。肺の中が空になるほど大きな溜め息を吐いたジャックだが、己の役目を思い出したらしい。顔をぱんと叩いて引き締めた。


「東の国へ行こう」


「会談時間まで2時間もあるぞ」


 指摘され赤面したのは、オレだった。くそっ、会談時間なんて知らねえよ。ぼやいた声は口の中でくぐもり、賢明にも外へ出すことはなかった。

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