225.ようやくお土産買いに行ける!(3)
一応騎士が警護につくので、全員馬で行くことになった。傭兵連中はこの場で待機だ。もう戦争ないなら、戻っててもいいんだぞ? そう言ったら泣かれた。
なんだよ、オレが心配なのか? 可愛いおっさん達だぜ。照れながらそう呟いたら、一斉に首を横に振られる。中央の国に先に戻ると、飯当番がオレ以外になるのが嫌なんだと。群れの最高司令官を飯炊き扱いとは、いいご身分だな。
帰ったら訓練をめちゃくちゃ厳しくしてやる。覚えておけよ。悪い顔で笑っていると、首根っこを掴まれてマロンの上に乗せられた。
『僕、カッコよく歩きます』
気合の入っている金馬の鬣を撫で、立派な角を眺める。影に入り込んだヒジリやブラウはいいが、コウコは断固拒否した。ベルナルドの筋肉が温かくて気持ちいいそうで……本当に契約しちゃえよ、もう。
スノーはマロンの鬣にしがみつき、金瞳を輝かせている。
『マロンはすごいですね。足が速いです』
感動しているが、お前もドラゴンで飛べるんだぞ? あ、聖獣は全部空を飛べるんだっけ。馬の姿だから別のような気がしてた。
「マロンはそのままで十分カッコいいし、可愛いよ」
ぽんと首筋を叩いた。軽く駆けるマロンは嬉しそうだ。こういう触れ合いを前の主人ともしたかったんだと思う。でも失敗した。無理矢理引き離されたとしたら、本当に可哀想だ。斜め後ろにシフェルとレイルがいて、前方にベルナルドが走る。それぞれ護衛の騎士から借りた馬だが、どれも足が速かった。少なくともマロンに置いていかれないスピードを誇る。
「……不本意だが吐いててよかった」
気持ち悪くなってきたし、尻が痛い。ひとまず尻は物理的な問題なので、エアクッションを敷いてみた。上下に体が跳ねるのは諦めよう。馬車ならサスペンションで高級車の乗り心地も可能だけど、仕組みもわからないし。馬自体に乗ってるからね。跨った馬が上下するんだから、オレも上下する。そして先ほどまで酔っていた三半規管は仕事を放棄した。
吐く……でも吐くものない。胃の中は空っぽだった。わかるか? 吐く物がないとさらに酔いが辛い。梅干し欲しい。
東の国に着いたら、お土産探すんだ。リアムのお土産……それだけを口の中でぶつぶつと繰り返しながら、垂れてくる唾液を飲み込んで耐えた。この苦行が早く終わることを祈りつつ、マロンにしがみつく。
「キヨ、乗馬は姿勢を正しく。背を伸ばしてください」
「無理ぃ」
本音でシフェルに返すが、彼は大きく溜め息を吐いた。あ、これは乗馬レッスンが新しく追加されて、オレの尻が割れるコースだ。すでに割れた尻を撫でながら、オレは涙目で東の国の王宮まで駆け抜けた。
城の入り口で馬から降りると、両足がガニ股だった。治らんぞ。がくがくと情けない歩き方に苦笑いし、ベルナルドが「失礼」と断って抱き上げてくれた。有難いんだが、オレはお姫様抱っこはちょっと……。
主君は足を怪我しておられる。そんな見えすいた嘘でオレを助けてくれるベルナルドだが、お姫様抱っこのせいで、しばらく性別を勘違いされる羽目に陥った。
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