213.事情を説明しろっての(2)
「勝手に暴走するな」
「あんたの替えはいねえんだ」
「ちゃんと説明して動け」
口々に荒い口調で叱られ、半笑いで受ける。じゃないと泣きそうだった。なんだろ、心配されて叱られるのって擽ったい。何度同じ状況になっても、泣きそうになるのかな。
一通りの説教が終わったところで、スノーがもじもじしながら膝の上に乗った。小さな手を前で揉みながら俯く。反省してる様子のチビドラゴンを抱き寄せ、ぺこりと頭を下げた。
「悪かった。今後はやらない!」
傭兵達に約束すれば、空気を読んだ連中はさっと散った。まだ夜明けの陽が差し込んでいない。少し寝られると欠伸しながら引き上げるジャックが、ちらりと視線を寄越した。頷いて手を振る。諦めたのか、無言で責めるノアもテントに引き上げた。
囮になる作戦をきちんと説明しなかったせいで、かなり怒らせたみたいだ。確かに指揮官が暴走すると止める奴いないし、レイルが血相変えて駆け付けたのもわかる。冷静になると理解できるけど……あのときはオレも手一杯だったんだよな~。
マロンが何か隠してるどころか、悩んでるじゃん。あまりオレに近づいて来なかったのも、それが理由だろう。ヒジリやブラウ、スノーは素直に甘えられるし。ツンデレだけどコウコだって距離感を詰めてきてる。なのにマロンだけおかしかったんだ。
こっちをじっと見てるくせに、近づかない。手を伸ばしても避けないけど擦り寄ってこない。絶対に変だ。だから話をしようと思ったんだけど、切り出したタイミングや言葉が悪かった。混乱させちゃって、たぶん傷つけた。
裏切ってる、そう切り離された気分にしたのはオレが悪い。悲しそうな声の響きが、すごく胸に痛かった。なのに突き放すような言葉しか出てこなくて、口に出してから後悔するなんて最低だ。八つ当たりかねて、敵には酷いことしたかも。
挙句にうまく行かなかったからって、レイルにめそめそ愚痴るとか……反省が追い付かないくらいどん底だからな。でもオレがつけた傷なら、オレが癒さないと! 他人任せに出来ない。
「レイルは?」
「おれはいいだろ」
そうだな。別に全員追い払わないとできない話じゃない。抱っこしたスノーに声をかけた。
「スノーは知ってたんだろ」
『はい、ごめんなさい』
言わなかったことを詫びるスノーは、少し震えていた。肌寒いのに、冷たい鱗のスノーを離さないオレの肩に、レイルが上着を掛けた。礼を言う間に、新しい上着を取り出して羽織っている。
本当にこの世界で知り合った奴は過保護ばっかり。
『マロンは……南の国を滅ぼしたかったんです。でも前の主人との約束があって、だから我慢して……ずっと苦しんでました』
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