78.オカラはやがてハンバーグになる(3)
常に自分のことで手いっぱいだ。他人を気遣ったり上手に動かす方法なんて、知ってるわけがない。近づいてくる気配に振り返れば、赤毛を乱したレイルが伸びをしながら横に並んだ。
「よう、キヨ」
「おはよう。レイル」
「もう『ひややっこ』騒動は落ち着いたか?」
冷やかす口調に、沈んだ気分が浮上する。こういう気遣いがレイルらしい。にやっと笑って「だって世界一の情報屋が探してくれるんだろ?」とカマをかけた。紙巻のタバコを咥えたレイルは手を止めることなく、火をつけて煙を吐き出す。
「起きてたのか」
「ほとんど寝てた、夢かどうか確かめただけ」
ぺろっと舌を出して、伸ばされたレイルの手を掻い潜った。苦笑いしたレイルの前で火を
「働き者だね~」
バカにしてるのか呆れてるのか。おそらく両方だと思う。レイルにしてみれば、また部下も起きてこない早朝に指揮官が料理を作ってるのは、奇妙な行動だろう。過去のオレがニートだったから、今働くとバランス取れるかも……なんて意味不明なことを思う。
「うーん。二度寝したら起きられないからね」
日持ちする黒パンを大量に取り出し、ハンバーガーにしたら良いんじゃないかと考えた。そういや、こっちにきてからジャンクフード系は食べてない。
「おはよう、キヨ。もう起きたのか」
「キヨは働きすぎだ」
朝からぼやかれたが、ジャック達も起きてきた。見張りのサシャが銃を背負ったまま近づいてくる。手元を覗き込み、鍋を勝手に味見する奴を叩いた。
「こら、食うなら手伝え」
収納から取り出した野菜と肉を刻んでスープに入れるよう頼み、自分は隣でハンバーグの確認を始めた。パンの大きさより少し小さめ……まるで予定していたようにぴったりだ。かまどの前でふと首を傾げた。
鉄板、またはフライパンってあったっけ? 野菜炒めは鍋で作ったし、肉は網で焼いた。でもハンバーグは絶対に網から零れるぞ。しかも鍋はスープで塞がってる。
「鉄板持ってる奴いる?」
「いないだろうな」
そうだよな、戦場にそんな重たい物持ってくる奴はいない。しかも作戦で使う予定もないのに、担いでくる奴なんて居てもオレくらいだ。
胸元から取り出したメモを真剣に眺める。何か代わりになりそうな物……椅子は木製だし、机も燃える。鉄製の平べったいもので熱しても平気で、ある程度の厚みが必要……うん、持ってない。
「鉄板なんて何に使うんだ?」
「フライパンの代わり」
この世界だって肉を焼くフライパンはある。正確には鉄板焼きの大きな板だが、調理場で食材をもらうときに見たので存在するはずだった。
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