245.選択肢は限られてる(2)

「我が君、この絨毯は良いですな」


「あ、うん。畳だと思うけど」


「タタミ? 後で購入先を調べましょう」


 ベルナルドとひそひそ話しながら、レイルの後について奥へ足を踏み入れた。新品や豪華な服ではないが、清潔感がある姿に身だしなみを整えた奴隷達が一斉に頭を下げる。


「よろしくお願いします」


 ご主人様とつかなかっただけ、マシか。言い聞かせた奴がいたから、他の奴隷も呼び方に困って省略したと思われる。中央の国に作った孤児院だと手狭な人数かな。王都にある空き屋敷を譲ってもらおう。なけりゃ、どこかの空き地に建てるしかないけど。


 見回した元奴隷の数はざっと35人。なんだか増えてる?


「彼らはジークムンド班に預けることになったから、一緒に連れてきてよ」


「うちの組織のガキに仕事を割り振ればいい。おれは一度、北の国に戻るから」


「何かあった?」


 嫌な予感がして尋ねると、ビンゴだった。


「シンがキヨに会いたいと暴れてるそうだ。連れて中央の国に向かう予定だが、構わないだろ?」


「……仕方ないかな」


 いろいろ問題あるが、放置プレイが最も危険な選択肢だってことくらい、オレも理解してる。あのシンを落ち着かせるには、顔を合わせて「シン兄様」と笑うくらいしか思いつかないから。下手すると抱きつくところまでサービスしないと、納得しない気がした。


 結構長い時間放置しちゃったし。北の国にできた義理の家族にご挨拶してないのが、マズイと思う。


「シン、怒ってるかな」


「どちらかというと、お前を見て泣き出すんじゃないか?」


 笑いながら言われて、そんな気もした。やっぱり中央の国へ帰ってから、少ししたら北にも顔を出そう。婚約や結婚の前に、義理の親と顔合わせは必須だろ。妹もできるらしいし。


 よし! 


「全員、中央の国に一時的に身を寄せるぞ。仕事や勉強を覚えてくれ。生活の保障はするよ」


 話が終わるのを待っていた奴隷だった人達に声をかける。獣耳がないから外見で区別はつかないが、獣人も混じってるらしい。大人しく聞いていた彼らは「生活の保障」部分で大喜びした。


 ジークムンド達と合流して向かうよう話したが、なぜかレイルが難色を示した。曰く、食事の準備がね……という現実的な話だ。ノア、サシャがいない傭兵集団が作る食事に、不安が残る……と。


 想像してみたが、まあ……なんだ、うん。不安しかないわ。多少料理の出来る奴もいるけど、無理っぽい。同行する? でもリアムに会いたい。


 悩みは深い。

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