245.選択肢は限られてる(3)
「お前が同行すりゃ解決だ」
「いやいや。オレ、めちゃくちゃ働いたじゃん! もうリアム不足で干からびる、死ぬ、倒れる」
「干からびろ、死なない程度に倒れてろ」
「酷いっ! レイル兄ちゃんの意地悪ぅ」
泣き真似したら蹴られた。解せぬ、美少年の泣き真似ぞ? もっと大切にしてくれ。弁慶の泣き所だから、地味に痛かった。
「えっと、1日目だけ凌いでくれ。大急ぎで転移してリアム補充して帰ってくるから」
妥協案だ。魔力の消費が多くて疲れるが、往復すればいい。お? 妥協どころか、名案じゃないか。なんでもっと早く思い付かなかったんだ。
聖獣コンプリート特典で、魔力量が激増したんだから使わないとね。毎日往復できそうな気がする。大丈夫、愛があるから出来るさ!
「毎日往復するのか?」
顔に出てたみたい。苦笑いすると、ベルナルドが顔色を青くした。
「我が君、そのような身を削る魔力の使い方はいけませんぞ。我がなんとしても阻止いたします」
「毎日往復しても足りるくらい、魔力は余ってるよ」
オレが告げた事実を、言い訳程度に受け取ったベルナルドは「危険です」だの「魔法陣をつくらせましょう」と騒ぎ続ける。専用魔法陣は、2つ作らなきゃいけない。置く場所はある程度自由だが、絨毯状態の魔法陣は対だから扱い注意だ。片方が傷つくと、作動しなかったり……変な場所に埋まって発見されたりすると聞いた。
オレのチート能力で飛んだ方が安全だと思うぞ。懇切丁寧に説明する手間を惜しんだオレは、ベルナルドの肩を叩いて微笑んだ。
「オレはこの世界の頂点に立つ聖獣の主だぞ? いざとなったら彼らの背に乗って往復できる」
「ああ。そちらでしたら問題ありませぬ」
そうだよ、こっちの手も使えたのだ。なぜ思い付かなかったのか。夜になったらリアムの宮殿へ帰り、朝に転移で戻ればいい。疲れたら聖獣の背に跨り運ばれ、調子が良ければ転移する――ホント、なぜ思い付かなかったのか。
魔法がない世界からきたせいか、どうしても物理で物を考えちゃうんだよ。作戦を考えるときに、魔法の存在を入れ忘れちゃう。自分に呆れながら、オレはいそいそと収納に入れたお土産の確認を始めた。
入浴剤と化粧品が少し減ったが、リアムの侍女達に配っても十分足りる。やっぱり多めに買うのは大切だった。
「夜までには戻る」
「おい」
早速転移しようとしたオレの襟を掴み、レイルが低い声で窓の外を見ろと告げた。言われるまま見た空は、綺麗な夕焼け……。
「もう夜になるから、帰るなら後にしろ」
「出発は明朝だろ。それまでに帰るからぁ……お願いっ」
両手を合わせて拝む仕草をしたが通じず、肩を落としたオレは縄でレイルと繋がれた。転移防止策の一環だとさ。めちゃくちゃ信用ないな、オレ。
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