235.薄荷は嫌いじゃないけどね(2)

 翌朝、ごく普通に目が覚めた。本当に寝かせておいてくれたらしい。カーテンの間から差し込む朝日に目を擦り、起きあがろうとして……動けなかった。


 左側にスノー、首に絡み付いたコウコ、両足を押さえるようにヒジリかな? 子供姿のマロンが右側からオレにしがみついていた。ブラウだけいないぞ。


『ご主人様、起きたっ!?』


 おはようをすっ飛ばして、叫ぶマロン。当然聖獣達が一斉に飛び起きた。そしてオレの予想通り、ヒジリは両足の膝下を押さえてたようだ。のそりと起き上がって顔を舐められた。


 身を起こしたオレの股間がやたら膨らんでいる。朝の生理現象だとしても異常だろ。そっと上掛けを捲ると……ブラウだった。正常元気なオレのオレ様を前に、目を丸くして尻尾を振るのやめろ。絶対に襲いかかる気だ。


 予想していたので、飛びかかったブラウを蹴飛ばして起き上がる。


「っぶなかった」


「キヨ様、お加減はいかがでしょうか。まだ動かれない方が」


 心配そうに駆け寄るベルナルドは、きっちり軍服のシャツ姿だった。どうやらソファに寝たらしい。背中が少し皺になってるぞ。


「おはよう、ベルナルド。心配させた」


 もう大丈夫と笑って見せれば、ほっとした様子で微笑んだ。強面なので熊の笑顔みたいだが、慣れると可愛い。オレに実害ないタイプの強面だから余計かも。


「おう、起きたか。キヨ」


 部屋をノックした直後返事の前に扉を開けるとこ、本当にジャックだよなぁ。子供の頃はお坊ちゃんだったとか、信じられないくらい傭兵生活に染まってるし。礼儀作法はそっちのけだった。


「朝早いな。まだみんな寝てるぞ」


「失礼ですね。起きています」


 開いたままの扉枠に手を掛けたシフェルが、軽くノックして存在を示す。これでレイル以外は揃った。彼はまだ戻らないだろうから、先に話を進めちゃおうか。


「王族を蘇らせて、処分するのって何回くらい予定してる?」


「朝から重い話ですね」


 シフェルが呆れたと肩をすくめるが、これは最重要課題のひとつだから。お土産はかなり確保できた。あとはレイルの探し人を見つければ、中央の国に帰れるのだ。さっさと課題を片付けたい。


「リアム欠乏症なの」


「「「ああ、なるほど」」」


 なぜか声を揃えて納得される。オレがフリーズして光ってた事件は、リアム要素が足りなくて欠乏症になり、現実逃避してたと判断されたらしい。そんなんで納得するなと叫ぶ前に、ヒジリの肉球で口を塞がれた。


 おま、それ……うんこ埋めた手じゃないだろうな。猫ってよくやるんだよ、寝てる奴の口に汚い手を入れたり乗せたり……少なくとも実家の猫はしてた。それもトイレでうんこ砂かき混ぜた直後に。

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