235.薄荷は嫌いじゃないけどね(3)
こういう場面で薄荷のスッキリ系のガムとか欲しい。
『主殿、我は聖獣ぞ』
「心を読むな。不法侵入で訴えるぞ」
神様の分身だと知ってれば、彼らのやたらと強い能力や不自然な崇められ方にも納得いく。逆にマロンが虐げられた理由が不明だが……あれは神様の気弱な部分を集めたんだろうか?
「キヨは早く帰りたいから、王族の件を片付けたいと?」
「そんなとこ」
説明できないって難しい。しかもオレ、嘘つきは向いてないと思う。悪戯心で騙したりするけど、ざまぁラノベ展開するの楽しんだりするけど、仲間に嘘つくのは心苦しいもん。だから、嘘にならない範囲で答えた。
「俺が知るだけでも……数十回か」
「……もう、いっそ死なないようにしちゃう?」
どっか地下牢でも閉じ込めて、一定時間で復活する魔法かけた部屋に入れとけよ。オレが生き返らせてたら、中央の国に帰れないじゃないか。
「それいいな!」
ジャックがあっさり賛同した。少し考えていたが、ベルナルドが同意する。
「そうですな。聞く限りにおいて、人道に悖る行為ばかりでしたから、彼らを人扱いする必要はないかと思われますぞ」
ベルナルドが言うと重みがある。ジャックだけだと軽いけど。そんな話し合いを聞いていたシフェルが、「バレなければ構いませんね」と呟いた。
「どういう意味で?」
「我が国の関与が表に出なければ、何をしても構いませんよ。どうせクズですから」
わお、シフェルの許可まで出た。これは王城の地下牢に拷問部屋設立の流れだ。オレは作るところまでで離脱しよう。血が飛び散るのとか、別に好きじゃない。
殺すのは平気だったけど、好んで拷問したいと思わなかった。まあ、リアムに酷いことする奴がいたら数十倍にして返すけどね。にやっと笑ったオレに、ジャックが後ずさった。
「ちょ、朝食の準備をさせる」
一目散に逃げた。あれ? オレ美少年だろ、なんで笑ったら逃げるんだよ。そんな悪い顔したかな。首を傾げて振り返ると、スノーが小さな旗を両手に持っていた。応援してたのか。
「それ、どうした?」
『昨夜、主様が眠ったあとで子供達と作ったのです。彼らは器用ですよ』
作ったんじゃなく、作ってもらったようだ。不器用な蜥蜴の手じゃ仕方ないが、これも神様の欠片? 本当に? つんと突くと、ころんと後ろに転がって腹を見せる。どう見ても威厳はなかった。
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