210.根絶やしって食べ物?(3)

 いつの間にか見張り役を交代したらしく、ジークムンドが大きく目を見開いた。


「おいおい、まさか……」


 蘇るのか? そんな言葉に、黒豹はあふんと欠伸をしてヒゲを丁寧に整える。手を舐めて顔を洗うヒジリの仕草が一通り終わると、彼はあっさり爆弾発言をした。


『すべての聖獣の主人がおるのだ、この世界で不可能などあるまいに』


「「「はぁあああ?!」」」


「何それ、神の領域じゃん」


「カミって何?」


 ぼそっと尋ねるサシャに曖昧に微笑んだ。説明が面倒くさい。だって神様の定義を宗教の観念がない奴に、どう説明したらいい? 聖獣みたいと言ったら、その先で聖獣と神の違いを説明出来なかった。オレの語彙力ゼロが露呈してしまうじゃないか。


『キヨは異世界の神になる!』


「それをいうなら新世界だろ」


 のそりと頭を覗かせた青猫を足蹴にした。そのアニメは好きだったぞ。くそっ。話がズレまくった。


「ごめん、ヒジリ。まるで死人を蘇らせられるように聞こえたんだけど?」


『そう告げた。違って聞こえたらおかしいであろう』


「うん」


 頷いたものの、どうしよう。何か変だぞ? 聖獣の主人コンプリートって、そんなにすごいの? オレ、マジで神になりそうじゃん。絶対に嫌だけど。


 神様ってほんのちょっとの感謝と祈りで、大きな奇跡をばら撒いて歩く善人だぞ。オレには無理だ。見返りなしに何かしてやるのも、初見の人の願い事を叶えてやる気もない。誰かを罰したり、気持ち次第で見逃したり……たまに他所の世界から異世界人を拉致するお仕事だろ。ただの自己中じゃねえか。


 バチの当たりそうなことを考える。


「オレが使えるの?」


『主殿のみだ』


「蘇った後は普通の人? 記憶がなかったり別人になったりしない?」


『そのような事例は知らぬ』


 責任取らせることが出来るかも知れない。ジャックの弟を殺し、妹を苦しめた男を裁く権利を……オレを助けてくれた兄貴分のために使えるなら、それって必然だよな。まさに得るべくして得た能力だ。


「よし! 決めた」


 立ち上がるオレを、胡散臭そうな目で見る傭兵達へ、腰に手を当てて宣言する。


「東の王族を一度蘇らせて、さくっと処刑しよう」


 いいアイディアだと思ったのに、彼らは固まった。その後ぼそぼそとディスられる。


「人でなしだ」


「俺だったらそのまま死なせて欲しい」


「キヨだからな〜」


「ジャックにとっては幸運か?」


 様々な意見が出揃ったところで、固まっていたジャックが口を開いた。


「……ありがとう、で合ってるか?」


 困惑した様子で周囲に確かめる彼の肩を、ノア、ライアンの順で叩く。巻き込まれた被害者を見る目で、ジークムンドがトドメを刺した。


「断ることも勇気だ」

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