12.淡い自覚(5)

 言わなくてもいい情報のような気がしたが、ついでに名を呼ぶチャンスと口にすれば、目を見開いたリアムがぽつりと零した。


「若いな……同じ年か」


 いま、なんて?


 零れそうに大きな目のリアムは、人間でいう10歳前後の外見に見える。今の12歳前後のオレより小柄で、身体のバランスも子供だった。背の小さい大人という感じではない。


 なのに、同じ年齢? 誰が? 誰と!


「え? 24歳?」


 失礼だとか無礼だとか、忘れて指差してしまう。のけぞるようにして叫んだオレに、リアムはきょとんと首を傾げた。不思議がる理由がないとでもいいたそうだ。


「そうだ」


「…だって10歳くらいに見えるじゃん」


 言外に『年下じゃないの?』と確認するオレの突き出したままの指先をきゅっと握り、皇帝陛下は威厳の欠片もなく頷いた。


「ああ」


「……ごめん、よくわからない」


 正直に眉尻を下げて理解できなかったと告げる。握られた指先が温かくて、リアムの体温は意外と高いのだと知った。緊張したオレの指先が冷えてた可能性もあるけど……些細なことでも知れると嬉しい。


 同じ24歳だとして、なんで外見が子供なんだ? いい加減、この世界の説明書が欲し……あれ? 最初の頃にノアが見せてくれた『異世界人の心得』とやらに乗ってたりして。あのとき属性の部分しか読まなくて、ライアン達も植物や動物の話を付け足してくれた程度だった。


 もしかしなくても、あの本を読めば書いてあったのか。


 読まなかった自分を後悔しそうになって、大量に起きた事件が過ぎった。誘拐されて殴られて、建物ごと人間溶かした挙句に、騎士と戦ったので、無理かも。本読む時間なんてなかったわ。


 軽く空を仰いでしまう。


「年齢と外見……キヨヒトの世界と違うのか?」


「違う。まずオレが12歳くらいの外見だから、元の年齢の半分だ。リアムは小柄だから10歳前後に見えるし……同じ24歳なのが不思議」


 そこまで説明すると、リアムは納得したようだった。やはり皇帝を務めるだけあって、頭脳明晰らしい。言葉を選びながら簡単に説明を始めた。


「属性は聞いただろう? 犬猫は見た目どおり年を重ねるが、希少性が高い属性のものほど長寿だ。成人するまでは2倍、成人後は10倍ほど年を取るのが遅くなる」

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