111.頭が頭痛で鼻血塗れ(3)

 思いついた魔法を見せびらかすために、リアムをまず結界で包む。それを見たシフェルが顔を引きつらせて自分の回りに結界を張った。何かやらかすと気づかれたが、構わず魔力を練る。


 火と風、多少の土魔法を混ぜてよ~く練ってから、窓際に移動した。窓枠から身を乗り出した時、ちょっとゲロが落下したのは許して欲しい。外に誰もいなかったのは確認済みだ。けろっとしたら楽になったので、手のひらに集めた魔力を風で上空まで運んで破裂させた。


 パーン!!


 鼓膜を揺らす派手な音に、集まった兵士がパニックになる。しかし傭兵連中はオレが何かやらかすことに慣れていた。別の窓から外を見て「綺麗だな」とのんびり感想を口にする余裕がある。外で爆発する分には建物に被害もないし、見た目も美しい。


「まだ出来るぞ」


 パン! ドン! 


 再び派手な音をさせて、花火が空に散った。うーん、これは朝より夜に見たい景色だな。


「すごいぞ! セイ。これは何という魔法だ?」


 目を輝かせるリアムを特等席にご案内し、土魔法で窓の外の吐しゃ物を隠しておいた。せっかく美しい花火に感動しているのだ。これは最低限の気遣いだろう。


 水魔法で作った水で口をすすぎ、ほっと一息つく。鼻血でごわごわする口元や鼻を丁寧に洗ってから、新しく着せられたシャツの袖で拭こうとしたら、後ろからタオルで顔を拭かれた。


「うっ、ぷ……ぅ」


「ほら、キヨ。後は自分で拭け」


 ノアだ。オカン登場である。残った水分も拭いてから、リアムに向き直った。


「まだ作れるよ。オレの世界では『花火』って呼んでた。火薬を土から集めて金属の粉を足して色をつけてから、水分を蒸発させて爆発させるんだ」


「よくわからないが、とても綺麗だ」


「これで、昨日の夜の不作法は許して」


 両手を合わせてお願いしたら、くすくす笑い出したリアムが「製法を公開してくれるなら」と条件付きで許してくれた。火薬の成分は適当だったし、混ぜた金属の粉も目分量だったが、製法を公開すれば誰かが研究して突き詰めてくれるだろう。


「よかった、許してくれて」


 ほっとしたオレに、リアムはこてりと首をかしげた。


「今のハナビとやらの製法と引き換えにするには、望みが小さいぞ」


「いや、オレにはリアムのご機嫌の方が重要事項です」


 きっちり訂正するオレの後ろから傭兵達が揶揄う声が聞こえた。


「ったく、ボスはタラシだな」


「しょうがないだろ。何しろ最愛の皇帝陛下様だ」


「やっぱ男好きなのか」


 最後の奴だけは鉄拳制裁しておいたが、それ以外は甘んじて受け止めた。

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