第17章 異世界の定番きたぁ!!
87.異世界定番のドラゴン来襲!(1)
それまで困惑顔だった傭兵の顔が一斉に引き締まる。各々が武器を手に振り返った先に、大きな影が見えた。3階建てのビルくらいで、オレが知ってる中ではドラゴンが近い。某怪獣映画にも似てるが、背中の大きな翼にかぎ爪があって、やっぱり洋風ドラゴンだ。
「……なに、あれ」
大きい。とにかく大きくて白銀の鱗がきらきらしてて、立派な怪獣だった。コウコと張る派手さだな。ちらりと視線を落とした首筋で、コウコが『しゃー』と威嚇音を出す。同族嫌悪と言う単語が脳裏を過るが、口にしないのが賢い主人だ。言ったら首を絞められる予感がした。
北の捕虜が叫んだため、ドラゴンは捕虜が繋がれた鎖にちょっかいを出し始める。何か興味を引くのだろうか。
「キヨ! 攻撃か撤退か、判断しろ」
ジャックに決断を迫られるが、そもそもあのドラゴンと戦って勝てる戦力差があるか。判断が出来なくて顔が引きつる。指揮官がオレでも戦ってこれたのは、相手が人間だったからだ。怪獣相手の戦闘経験はないし、過去のサバゲー知識も役に立たなかった。どっちを選ぶのが正しい?
捕虜を見捨てて撤退すれば、傭兵連中は助けてやれる。だが北の王太子が混じった捕虜を置き去りにしたら、あの差別された環境で責められるのはジャック達だ。何より、捕虜を犠牲にして逃げる選択肢が浮かぶこと自体、オレは薄情なんじゃないか。
「……戦える、のか」
弱点も知らない巨大怪獣と戦って勝てるのか? オレが知る異世界物はドラゴン来襲が定番だけど、倒すときは大抵チート魔法だからな。銃とナイフで立ち向かうような敵じゃないだろ、これ!
白く輝く鱗を滑らかに動かしながら、大きなドラゴンが尻尾を振った。
『主殿、戦う決断を』
ヒジリに促され、我に返った。そうだ、聖獣が3匹もいるんだから、オレの方が過剰戦力だろ。十分勝てる。見上げたドラゴンは大きいが、コウコだって本来の姿になら巻き付けるほど巨大だった。
「うわっ……やめろ」
捕虜の一番後ろにいる奴を爪に引っかけたドラゴンが、乱暴に引っ張る。全員が左手を鎖で繋がれた捕虜は、数珠つなぎに吊り上げられていた。あのまま落とされたら、一番高いところにいる奴は命が危険だ。
「くそっ、武器があれば…」
悔しそうな王太子の声に、戦う覚悟を決めた。武器を持たない王太子が諦めてないのに、銃やナイフを持ってるオレが先に諦めるのは違う。
この世界の常識なんて知ったことか! オレが助けたいと思えば、動けばいいだけだ。どうせ非常識のレッテルを張られてるんだから。
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