63.次の戦場までに簡単クッキング!(3)
「転移魔法陣は人の移動に使う。人が手にしている物は一緒に移動できるが、物単独で転送できないぞ」
「どうしてさ」
「さあな」
それって……試したことがないからわからないレベルの話? 試したら、意外と物も普通に転送できちゃったりして。まあ検証は今度にしよう。
「不便だな~。オレはさ、魔法ってもっとオールマイティに何でもできると考えてた」
「制約が多いから魔法だろ」
「ボスは変わってるな」
苦笑いしながらテントを組み立ててくれる傭兵達に、にやりと悪い笑みを向ける。びくっと肩を揺らした彼らに、収納口から取り出した食べ物をちらつかせた。
「いいのか? そんな口利いちゃって。美味くて温かいメシ用意するつもりだったけど、やらないぞ?」
茶化した口調で揶揄りながら、張ったテントの前に机を置いた。上に食料品を並べていく。
「食べられるもの作れるのかよ!」
揶揄いに乗った野次に応えて、鍋などの調理器具も取り出した。机がいっぱいになる量の食料品を確かめ、足元の影に声をかける。
「ヒジリ、かまど作って。こういう丸い形で上に穴開いてるやつ」
がりがりと出来上がりイメージのイラストを描けば、黒豹は『ふむ』と頷いてかまどを作った。上に開いた穴に水を張った鍋を置いて………落ちた。
「ヒジリぃ、上の穴を鍋が落ちないように小さく」
『主殿が作ったほうが早かろう』
文句を言いながらも調整してくれるヒジリが、上の穴を少し小さくしてくれた。今度は鍋が素直に上に乗る。ぴったりだ。ついでに数を4つに増やしてもらい、鍋も4つ用意した。
「ありがとう、ヒジリはやっぱり偉いな」
撫でて喉をごろごろ言わせる聖獣に寄りかかって、収納魔法で持ってきた薪をかまどに並べていく。確か地面近くに数本並べて、それから上に立てるようにするんだっけ? 三角を作る形に組み上げてから火をつけようとして、首に絡んだコウコに触れた。
「コウコは火をつけて。全部炭にしちゃ駄目だぞ」
『お安い御用よ』
ふぅ…とコウコが息を吐くと、ぽっと火がついた。小さな火はあっという間に薪を炭にしていく。立ち上がって食材が並んだ机の前に、調理用の机を追加した。
「ボス、捕虜はどうする?」
「逃がさないようにしてくれたら、後はジークに任せる」
ジークムンドにすべて預けたのは、これ以上一人で抱えるのは無理だから。ジャック達のグループは何をしてもオレについてくる。ならば、捕虜を管理するグループを別に選ばないといけない。
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