76.熱中症対策で革命を起こせ!(2)

 イラっとして即答してしまった。変な知識ばっかり異世界から仕入れやがって。こうなったら空を飛べばいいんじゃないか? 変温動物の蛇……じゃなかった、龍なら暑さも平気なはず! 首筋や腕を確かめてもコウコがいない。


「あれ? ヒジリ、コウコ知らない?」


『さきほど、水浴びにいったぞ』


 なんて羨ましい。じゃなくて、どうしてオレを誘わなかった? 誘ってくれたら絶対に一緒に行くのに。行進するだけなら、シフェルかジャックに任せて……そこまで考えたところで、足元がぐらっとして足をひねった。


「いてっ!!」


 段差を踏んだ時に「ぐきっ」と足が横に折れる感じ。すごく痛い。しかも捻った瞬間に転んだので、汗ばんだ肌に土がつくし最悪の状況だった。


「……キヨ?」


「痛い、暑い、もう無理、歩けない、つうか歩かない」


 並べていた文句が途中から決意表明になる。斜め前を歩いていたシフェルが指示を出すと、いったん止まった騎士達は前進する。その向こう側の兵士と捕虜も足を止めることはない。しかしオレの後ろにいた傭兵達は、ちょうどいいと休憩を始めた。


「水作れるやつ~」


「はーい」


 手を挙げて水を作ってやる。西の自治領に誘拐されたときは、魔法を使えることを失念してて苦労したのだ。取り出した鍋に満タンの水を作って、ついでに氷も浮かべてやった。


「みんな、ボスに礼を忘れるな!」


 ジークの号令で、一斉に傭兵連中が頭を下げた。その中にふらついてる数人を見つけ、前世界の知識を絞り出す。たしか熱中症ってあっただろ。あれの対処方法は脇の下や首を氷で冷やす、水をぶっかける? いや、倒れてからは冷やしてたけど……違うな。


 唸りながらテレビの映像を思い出す。ニュースのお姉さんが炎天下で笑顔を作って、必死にコメントしてる姿しか出てこなかった。これは使えない。


 夏にしてたことといえば、まず昼夜問わずクーラーを切らない。冷たいアイスやお茶を飲む……水分補給液とかいう甘酸っぱい液体を飲む。あの補給液とやらの味はうっすいスポーツドリンクだった。でもしょっぱかった。つまり塩多めの砂糖少な目。個人的にグレフルより檸檬味が好き!


「もう少し待って」


「「「は?」」」


 水を汲もうとした連中を一時停止させて、砂糖と塩を適当に放り込む。この辺はカン頼みだが、薄くしといたから後で調整すればいいだろ。なんか料理チート系ラノベみたくなってきた。


 自分でおかしくなって、くすくす笑いながら鍋をかき混ぜる。ちょっと味見して、檸檬を輪切りにしてぶち込んだ。これも味見して……もう少しだけ塩を入れる。


「よし、飲め!!」

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