258.あれ、1人多くね?(3)
横文字だらけで聞き取れなかったので、リアムにメモの端に書いてもらった。えっと、中間にセイが増えて名字が北の王家から中央の皇族に変わる、か。まさに出世魚!
「「長すぎる」」
「皆はキヨでいいぞ。ちなみに前世は聖仁と書いてキヨヒトだった」
生まれ変わりはこっちで親が新しい名前を付けてしまう。愛梨がよい例だ。本人の意識があろうと赤子なら名前を伝えられないからね。オレは幸いにしてサイズ変更した上で転移なので、自分で名前を口に出来たってことか。
複雑な事情を理解しながら、呼び方に迷う。
「今後はキヨに頼むとあれこれ便利そう」
「わかる! 権力者の知り合いって便利よね」
物騒な発言は無視して、日本人会のメンバーはわざと名前を使い分けていると教えてもらった。外でうっかり話しても「伯爵令嬢パウラ」と「愛梨ちゃん」が同一人物だと気づかれないらしい。その意味では、オレのような本名が呼び名のタイプは困るだろう。でもセイはリアム専用の呼び方だし。
「銀髪だし、銀ちゃんでよくない?」
愛梨ちゃんの一言で決まった。日本人会では銀ちゃん……メモの端に書いておく。絶対にオレ忘れる自信ある。呼ばれても反応しないと思うが。
「それにしてもタカミヤさんの旅館、もうすぐ終わりかぁ」
「あ、私も部屋取ってよ。泊ってくから」
「貸し切りだから無理ですよ」
海斗と愛梨ちゃんの声に、タカミヤさんが律義に断る。が、リアムに尋ねたら「いいよ」とあっさり許可が出たので、お泊り会が決定した。夜は肉じゃがが出るらしい。オレの料理チートでも、調味料が把握できてないものは作れないからな。醤油と砂糖は分かるんだけどね。
「ところで、聖獣様って5匹だよな?」
「うん」
「倒したドラゴンって、聖獣様じゃないのか」
「あ……うーん、微妙に違うというか。合ってるというか。その辺は夕食後に話すよ」
倒した竜の中にスノーが飲み込まれてたんだよな。その話を肴に盛り上がるつもりのメンバーだが、気づいてしまった。リアムは愛梨ちゃんに対して警戒心が働いているらしく、可愛く睨んでけん制している。何このハーレム展開! え、違う?
いいじゃないか。オレが望んだ異世界ラノベ展開そのものだ。もちろん大切なのはリアムだけだから、この後しっかりフォローするけどね。
不敬だと騒ぐのも違うと感じたベルナルドとクリスティーンは、それぞれに国や夫へ連絡を始めた。その脇で、卓上ゲームを持ち込んで知識チート全開の貴が取り出したオセロは、大いに盛り上がる。チェスに慣れたリアムも何回か負けたことでムキになり、あっという間に仲良くなれた。
ちなみに夕飯には日本酒が添えられ、刺身、てんぷら、肉じゃがと和食の大盤振る舞い。慣れてきたリアムやクリスティーンも満足する豪華さだった。なお、最後に牡丹鍋だと言って出された肉は、イノシシに似た別の魔物の肉だったらしい。美味いからいいけどさ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます