218.追いかけっこと尋問ごっこ(2)

『あ……もう、捕まえたのですか』


 マロンが走り込んできた。レイルを追ったオレ達はズルしたし、オレを追いかけたベルナルドは護衛だから不参加。そう考えると、出遅れたのにマロンは2番手だ。十分すごいと手を広げて褒めると、肩を落として子供は膝を抱えて座ってしまった。


 それ、体育座りって言うんだぜ。この世界では知らんけど。


「一緒に寝ようか」


『でも、僕遅かったから』


 しょんぼりしながら、その瞳に期待が滲んでるぞ。聖獣特有の蜂蜜に似た黄金瞳の瞳孔が、きらきらと光る。膝を抱えるマロンの隣に乱暴に座った。


「ご褒美とは別に、一緒に寝よう。それとも嫌か? 確かに少し寝相は悪いかもしれないけど」


『いいえ! 一緒に寝ます』


 ようやく本音を口に出したマロンの髪を撫でる。オレに似た子供は、嬉しそうに笑った。他の聖獣はそうでもないけど、マロンはいつも悲しそうにしていた。こうやって笑ってられるよう、オレが気を使ってやらないとな。


 立ち上がって、他の聖獣のところまでマロンを連れて行く。


『ならば、我も一緒に寝よう』


「え?」


『あたくしは当然、腕に巻きつくわ』


『隣がマロンなら、私は反対側がいいですね』


『僕は胸の上』


「……ブラウだけ却下だ」


『ええええ! なんでさ、主は僕を差別するの?』


 泣き真似をする小型青猫の首後ろを摘んでぶら下げ、きゅっと丸まった脚の猫をベルナルドの腕に押し付けた。


「オレが窒息したり悪夢みたらどうする気だ。丈夫なベルナルドに頼め」


「我が君の仰せなら」


『全力でご遠慮します! じゃあ股間で』


 最後まで言い切る前に、ヒジリが青猫を咥えて影の中に押し込んだ。猫って胸や喉、股間とか……急所が好きだよな。なんて思いながら、森をテントの方へ戻った。もちろんマロンやベルナルドも一緒に。何やら話があるとかでレイルとシフェルは置いていった。


 あれだけ脅して勝敗がはっきりすれば、シフェルもリアムに情けない報告はしないだろう。払った金貨は確かに高額かもしれないが、オレにとってリアムからの評価には変えられない。


 テントに戻ると傭兵達が「見つからない」と中間報告にきた。この辺は言い聞かせた結果が出てる。もう見つかったことを説明し、残った連中に引き上げるよう伝えた。南と東の間にある国境の街が近いので、収納から取り出した金を多めに渡す。


「これで酒でも買ってこい」


 飲み屋や女遊びで羽目を外すと厄介なので、買ってきて飲むよう提案する。喜んで買い出しに向かうジークムンド達を見送り、手早くテントを片付けた。


「ところで、南の国も聖獣がいなくなって数日経っただろ。何もないのはなんでだ?」

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