244.絶対の意思表示が大切だろ(2)
とにかくオレの知識は役に立たない。実際に宰相として国を動かしてたアーサー爺さんが動いてくれるなら、お願いするのが無難だろう。ここで奇想天外なアイディアが浮かばないところが、オレだよな。まあアイディアがあったとして、実行できる保証はないし、実行しても効果ないだろうけど。
「奴隷だった子達は、一度中央の国で教育してから送り返すけど、ひとまず国を預けるよ」
「お預かりします」
ハンカチか何かみたいな、軽いやり取りで国土が預けられる。といっても、聖獣の前で決めた以上、下手な契約書より効果があるらしい。まあ一応神様だしね。この世界の人は知らないけど。
聖獣が世界の存在を支えているのは自明の理で、王族の代わりに土地を維持するオレに逆らう愚は犯さないだろう。地面が消失しちゃうからね。
「間違ってもジャック父は関わらせないでね」
「……やれやれ、あのバカは何をしでかしたのやら。承知しましたぞ」
アーサー爺さんは苦笑いしながらも了承してくれた。相手を見て態度を変えるような元宰相なんて、信用できない。政治家と一緒で簡単に嘘つくと思う。実際、ウルスラだって国益のためなら嘘つくし騙すだろうけど。政治はそういう汚い部分があるのも理解してるよ。
利用して楽する気もある。ただ、ジャック父は信用できないと思うだけ。
「シフェルは無事に片付けたかなぁ……ひとまずレイルと合流して帰るか」
「お? 帰れるのか」
「たぶんね」
確約はできないが、もう帰りたい。土産は手に入れた。南の国に奪われた砦も取り返した。最初に言われた仕事は全部片付けたのに、余計な仕事が次々と入ってくる。これ以上付き合ってたら、オレはリアムのところへ帰れない気がするよ。
「絶対に帰る、リアムのとこへ帰るんだ」
オレの宣言を聞いて、ジャックやノアが「ああ」と気の毒そうに頷いた。婚約式もしてなくて口約束状態のリアムを置いてきたオレの不安は、もう爆発寸前だ。彼女に会いたいし、一緒にいたいし……でもまだ恋人だって大声で宣言できない。
リアムはまだ「皇帝陛下」なんだから。女帝じゃない――早く可愛いドレスをプレゼントして、着せてあげたいな。可愛いだろうな。
「キヨ、ニヤニヤしている場合じゃねえぞ」
「あん?」
言われて振り返ったオレは、大量の獣人やら奴隷を連れた騎士の御一行様と対面した。あれれ? 仕事早いな。
「お疲れ様です。城はどうでした?」
「誰もいなかったから、オレのものだよね」
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