244.絶対の意思表示が大切だろ(1)
城門の詰所がある場所で、オレはヒジリが捕まえた狙撃犯と対面していた。東の国の貴族の……誰だっけ? なんか難しい家名の奴の回し者らしい。
宝物庫の床を壊したのも、その貴族だってさ。盗もうと思って塔に砲弾を打ち込み、扉を開けたら中身がなかった。隠し場所がフェイクだと思ったらしい。そこにオレ達が来たので焦った結果、狙撃しちゃったのか。見張り役を言いつけられたのに、つい手を出しちゃった辺り……見張り失格じゃね?
黒豹に追い回された男は、持っていたライフルを捨てて全力で木の上に逃げたが……ご存知の通り、猫科の動物は木に登れる。オレも追いかけられた時、木に登って逃げたから人のこと言えないが。
あっという間にヒジリに肉薄され、木から叩き落とされ骨折した状態で捕獲された。駆けつけたサシャが同情しながら縛り上げ、現在は足元に転がっている。
「あんたの処分は、この国の法律で何とかしてもらおう」
「は? だったら無罪だ」
覚えづらい貴族は、それなりに悪い奴らしい。
「ふーん。それなら北の国の第二王子暗殺未遂犯に格上げしようか?」
「……冤罪だ」
嫌な予感がしたのか。犯人の強気なテンションが落ちていく。少し顔色が悪い。そこへしっかり釘を刺した。
「残念、冤罪じゃないんだな。で、第一王子は弟を異常に可愛がってるから、楽に死なせてもらえないと思うよ。この国で裁いてもらえよ」
面倒くさいから。本音が滲むオレに、アーサー爺さんが髭を弄りながら笑った。笑い事じゃねえぞ。マジで過保護な義兄だ。
「第二王子なんていなかった」
事実
「オレ、王子様」
にっこり笑って自分を指さすと、犯人の血の気がさっと引いた。焦って助けを求めるように周囲を見回すが、全員が頷いて肯定する。ベルナルドに至っては、オレを守ろうと剣を抜いていた。そこに刻まれた紋章は、中央の国のもの。
北の国の王子で、中央の国の騎士が護衛に就いている。混乱して半泣きになった犯人は、地下牢に閉じ込められることとなった。
「ふむ。何らかの交渉カードに使えそうじゃの」
アーサー爺さんが有能すぎて、逆に怖い。オレは幾つかの条件と引き換えに、爺さんに東の国の立て直しを頼むことにした。
だってさ、日本で引きこもりしてたサバゲーのクソガキが、国の運営とか無理だから。前世界の知識に、会社の経営知識でも入ってりゃチートだけど、何もないもん。精々がゲームやアニメを齧った程度。ラノベの悪役令嬢ざまぁ物で領地運営の立て直しは読んだけど、あれって肝心の詳細部分が曖昧だよな。
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