09.自覚ゼロ(2)
「危機感ですか?」
「ええ。カードもボールも落としたり受け取れなくても危なくはないでしょう? でもナイフは命が絡むから受け止めた。つまり……危機感の有無かしら、と思ったのよ」
言われてみればそんな気もしてきた。別に美人の意見だから賛同するわけじゃないぜ? 説得力ないと思うけど……。
話がこう着状態になったところで、ジャックに掴まれて痛い頭を撫でたオレが改めて疑問を呈した。
「ところで……なんで、こんなに集まってるの?」
「「「「「お前の所為だ」」」」」
ほぼ全員がハモる。
「……オレ?」
再び全員が頷く。少しばかり考えてみるが、攫われたことで迷惑をかけたのかも知れないと思いついた。
「ああ、攫われたこと? ごめんなさい」
「「「「「そっちじゃなくて!!」」」」」
異口同音。彼らの全力での否定に小首を傾げる。
他に何かあっただろうか。攫われて、ちょっとキレて……あ、もしかして!
「あの人攫いを殺したから?」
「違います!!」
シフェルが呆れ顔で否定。
ん? これも違うのか。
「じゃあ、他の子供を逃がしたのがマズかった?」
「そうじゃねえ! その後だ!!」
ジャックが頭を抱えて、これまた否定。
「……もしかして、溶かした煉瓦の弁償問題?」
お金なんて持ってないぞ。あの人攫いの金貨を拾っておくべきだったか!?
心配を顔に書いたオレの頭へ、ぽんとライアンの手が乗せられる。撫でるより押し潰す勢いで、ぐりぐり強い力で髪を掻き乱された、
「おまえ、本当に自覚ないんだな……竜でもあそこまで『純粋』な奴、滅多にいないんだぞ」
「異世界人だから理解がないのもわかるが、おそらく竜の中で片手に入る魔力量だ」
はあ……呆れ顔で「こいつら何言ってんの?」と眉を顰める。
足元に落ちたままのカードを拾うと、書かれていた内容を読み始めた。どういう仕組みなのか、ちゃんと文頭から始まり、読む速度にあわせてスライドしていく。試しに視線を逸らして戻してみたら、読み終えたところで止まっていた。
優秀だ。このカードの仕組みを持ち込めば、前の世界で億万長者になれそう。
にしても――。
あの人攫い、本当に悪人だったんだな。
確かにオレの扱いも酷かったし、平気で子供――外見だけでも12歳だ――を蹴ったり殴ったり、鎖で引き摺る時点で悪人だが。人身売買どころか、臓器を取り出してバラしたのは酷い。
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