123.舌戦は低レベルなほどダメージ大(2)
耳元でこっそり囁く。
「貴族があれこれ言ってきても、口を挟まないでね。オレが
むっと不満そうな顔をするヒジリだが、何か気づいたらしい。
『なるほど……それゆえの褒美か』
「そういうこと。強請る理由と価値がある褒美のお陰で、今のオレは本当に無敵だから」
ぽんとヒジリの体を叩いて身を起こすと、ちょうどスノーが戻ってきた。返信を預かったというので受け取り、読んですぐに手の中で燃やす。
魔法使いっぽくてカッコいいから試したが、事故だと勘違いされ焦ったジャックにお茶を掛けられた。うん、カッコつかないところがオレらしいよな。お笑いみたいだもん。
『青猫はどうする』
ごろごろ寝転がるブラウを睨むヒジリの喉を撫でながら、肩を竦めて答える。
「余剰戦力? どうせ気になれば勝手に参戦するだろ」
『主殿は青猫に甘い』
むっとした口調で抗議する黒豹に、くすくす笑いながら教えてやった。
「聖獣ランク不動の1位はヒジリだぞ。オレの名を持つのも、ヒジリだけだ」
聖仁――この漢字から一字を取って、オレと同じ文字を持つ聖獣はヒジリだけ。満足したのか、ヒジリはそれ以上何も言わなかった。ただ機嫌の良さを示す尻尾が大きく左右に揺られる。
シフェルからの返事は来た。準備は出来ている。あとはオレの覚悟だけだ。勝つための手は考えたが、ぴたりとハマってくれるかどうか。相手の出方次第だった。
『主人、これを預かったわ』
コウコも戻ってくる。シフェルの簡潔な返事と違い、少し長い文章だった。それも読んだら燃やそうと思ったが、またお茶が飛んできそうだ。仕方なく収納空間へ放り込んだ。
よく悪人が書類や手紙を残してて、あとで証拠として回収されてピンチになる。あれほど間抜けな状況はない。脅しに使うんならともかく、そうでなければ復元できない形で処分するべきだった。燃やしたのも、収納空間へ入れたのもそれが理由だ。
「ちょっと宮殿に行ってくるね」
ちょっと行く場所ではないが、傭兵達は頷いた。オレが皇帝陛下の同性の愛人(?)だと勘違いしているため、特に心配したり疑問に思うことはない。騙すようで申し訳ないが、身分を盾にする戦場へ彼らを連れて行けなかった。
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