325.女性王族って怖え!!(2)

 その後も震えながらレイルにしがみ付き、王族席のシンのところまで後退した。こえぇ、マジで削ったし。粗末だとか罵られながら、容赦なく血溜まりが出来た。歴戦の傭兵や騎士が顔を背ける事態に発展したらしい。意外と女性達は平然としており、拳を突き上げて勝利宣言をする者までいる。


「女性不信になりそう」


「あれが皇帝陛下でもダメか?」


 レイルがヴィオラを示す。あの位置で勝利宣言を上げるのがリアだったら? 


「あ、それは全然平気。リアだったら、どんなリアでも愛せる」


「ご馳走様」


 震えも止まったし、なんなら股間の幻痛も治った気がする。ヴィオラは宣言通り、ヤリチンを処理すると戻ってきた。本体は手当てをしてから、王都の外へ捨てるそうだ。中途半端な位置だと思ったら、ちゃんと理由があった。


 まず、王都の内部を汚さないため。次に遺族や被害者が追いつける距離。手の届く場所に放置するから、刻んでも潰してもいいよ。でも王都の内側ではやめてね。という意訳だろう。オレがいた日本と違うのは理解していたが、戦争してたくらいだし……一般市民も意外と逞しいようだ。


 罪人に関しては、江戸時代くらいの残虐さが残っている。おろし金を考えたオレが言うのもどうかと思うが、磔獄門やら、一族郎党首を刎ねよ! くらいは実際の刑罰で存在してた。火炙りはマジで怖い。


「王家に逆らった連中の中で、さらに罪が発覚した奴は火炙りだとさ」


 レイルが詳細に説明してくれた。つまりアホ子爵や憎らしい伯爵は、火炙りから始まる。さらに罪が重なると、牛を使った八つ裂きだとか。拷問に近くないか? それ。


 この世界の住人は属性別で魔力が強かったり、肉体的に強化されている。そのため確実に殺す方法が、処刑に取り入れられた。様々な異世界人の知識の結集だったら嫌だな。オレのおろし金も、いずれ処刑道具として量産されたりして……大丈夫、浮気や強姦をしなければ対象外のはず。


 続いて別の処罰が始まるらしく、ヒートした観客が野次を飛ばす。高利貸しをして民を苦しめた元侯爵閣下が引きずられて登場し、金属製の十字架に拘束された。といっても、この世界に宗教自体はない。当然キリスト教も持ち込まれていなかった。


 十字架は単に、両手を広げて両足も縛り付け、さらに顔を下げないよう縛り付けるとしたら合理的な形のようだ。Yでもよくね? と聞いたら、顔を下げるからダメらしい。シンが言うには、罪人の苦しむ顔が見えないと、意味がないのだとか。確かに家族を殺された遺族にしたら、苦しんで死ね! と思うよな。


 処刑人のおっさんは手際よく元侯爵の金貸を縛り付け、喚き散らす男の足下に薪を積んでいく。十字架の下部分がわりと短いので、薪を元侯爵の足に巻き付けた。準備が終わると火をつける。


 何とも言えない悪臭が立ち込め、絶叫して身を捩る元侯爵の姿に、すすり泣きや仇を討ったと叫ぶ声が重なった。民の鬱憤晴らしと、確実に処刑した証拠を残す意味で、公開処刑が一般的だ。王族は立ち合いを求められるが、シンは何度見ても気分が悪いと溜め息を吐いた。


 よくだな、オレは溜め息なんて吐いて臭いを吸い込むのは嫌だから、鼻を摘んで呼吸を出来るだけ減らして……あ、結界。こんな時のための結界だ!!


 王族席の義理の家族とレイルを合わせ、結界を張った。臭いを完全遮断で、中の空気を換気する機能付き。かなり臭いは緩和されたが、服や髪に悪臭が残っていた。浄化で消して、ほっと安堵の息を吐く。


「キヨ、この結界はすごいな。魔法陣を売ってくれ」


「売りたいけど、作り方が分からない」


 今後も使えるとシンが喜ぶものの、イメージだけで魔法や結界を使うオレに、魔法陣が描けると思うか? 無理だ、絶対に無理だから。

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