81.二つ名の登録方法(3)

「二つ名って勝手に登録できるの?」


「実力者からの推薦と、名称の確認があるけどな」


「二つ名を登録されたあとで変更できる?」


「出来ない」


「本人が納得してなくても?」


「通称名だから関係ないぞ。そもそも複数の推薦がある時点で、実力審査はクリアだ」


「ふーん」


 システムがよくわからないが、シンプルなのかも知れない。話を聞いた範囲だと実力者の推薦が必要で、複数の実力者が名乗り出れば実力テストだか審査もOK。通称名に本人が納得しなくても、登録できちゃう……明らかな欠陥システムじゃねえか。


 ネット注文だって2回は支払い意思確認があるのに! 本人の意思確認なしで、勝手に他人が登録できるシステムってのは、問題だらけだと思う。


 木漏れ日がだんだんと少なくなってきた。森の奥に入り込んでいるのだろう。肌寒いくらい気温が下がってる。逆に湿気は高くなっていて、ヒジリの毛皮も冷たく感じられた。


「じゃあ、オレの『死神』って不吉な名前も変えられないの?」


「無理だな」


 他人事だからけろりと肯定される。どちらかといえば、レイルは楽しそうにしていた。嫌な予感がよぎる。もしかして……レイルも推薦者の一人なんじゃ?


 レイルの手首をつかんで逃がさないようにして、にっこり笑顔を浮かべた。嫌な予感がしたのか振りほどこうとしたレイルへ、猫なで声で依頼する。


「ねぇ。オレの二つ名の推薦者、調べてよ」


 言葉と同時に周りの反応を窺う。


「いや、それは秘密になってるから……マズイだろ」


 誤魔化そうとするレイルだが、掴んだ手がびくっと強張ったのは見逃さない。ビンゴ、コイツは間違いなく推薦者だ。あと顔を逸らしたジークムンド、冷や汗を拭ったノア、肩を揺らしたジャックも決まりだな。罠にかかった獲物を改めるように、しっかり記憶した。


「そう? オレが把握したのは『剛腕のジーク』『菩薩のノア』『雷神ジャック』『赤い悪魔レイル』までだけど……それ以外にもいそうだよね?」


 直感に近い部分で、他にも関係者がいそうだと呟く。もう一人、二つ名は知らないが心当たりがあった。たぶん……赤銅色の髪の近衛騎士も関わってるだろう。


 無言を通すレイルの表情は動かない。しかし掴んだ手の脈が少し早いよ? まだまだ甘いなぁ。なんて、偉そうなことを考えながら手を離してやった。汗でしっとり濡れた肌を腰のあたりで拭う仕草は、ボロが出てる。


「名称の確認って、どうやるのさ。こんな幼気いたいけで無害な少年を掴まえて『死神』は酷いよね」


「「「「ぴったりだと思うぞ」」」」


 なぜだろう、全員が口を揃えてオレが死神で問題ないというのは、あれか? ヒジリ達と契約したからか。コウコが北兵を薙ぎ払ったのがいけないのか。ブラウは……まず関係ないな。失礼な分類されたことに気づいたわけないだろうが、ブラウが影から飛び出した。

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