154.愚痴だから許されるのに(2)
『青猫もたまには良いことを言う。我も手伝おう』
『私も手伝います』
『あたくしも!』
え? ――止める間もなく、聖獣たちは大喜びで影に飛び込んだ。慌てて手を突っ込んで青猫の尻尾を掴む。
「ちょい待て! 何をしでかす気だ?!」
『やめて、そこは敏感なのぉ』
「引きちぎるぞ?」
低い声で威嚇すれば、ふざけていた青猫がしぶしぶ顔を出した。首根っこを掴んで、代わりに尻尾を離してやる。
「全員止めて来い」
『でも、主にとって邪魔なら処分したらいいじゃないか』
「オレが自分でやるから意味があるの! 止めて来い!!」
影に向かってブラウを投げたが、影に入れず顔面を打ち付けただけだった。ぶぎゃ……と潰れた悲鳴に、慌てて抱き上げて顔を撫でてやる。猫はもとから平たい顔をしているので、よくわからないが痛かったんだろう。鼻やおでこを撫でていると、ヒジリがひょこっと顔を見せた。
『主殿は優しすぎる』
『そうよ、や(殺)っちゃえばいいのに』
コウコの呟きが不吉な変換されたぞ、おい。
『私もお手伝い(虫けらを踏み潰すくらい)出来たらいいと思ったのですが』
丁寧で優しそうな口調だが、副音声が怖いぞ? スノー。
「うん、わかった。こうしよう! オレが失敗したら手を出してよし。それまで手出し禁止。これは命令だから」
きっちり命じないと、取り返しのつかない騒動を起こす奴らだ。段取りや今後の使い道も考えず、オレの『にこにこ笑顔でやっつけろ、ざまぁラノベ展開フルコンプリート』作戦をぶち壊すに違いない。ぐっと拳を握って力説すれば、聖獣たちは残念そうに顔を見合わせた。
聖獣による貴族蹂躙事件をぎりぎりで防いだ功労者であるオレは、ノアが差し出した麦茶をもう1杯飲み干す。ちょうどいいので、休憩に入ろうとヒジリの毛皮にもたれかかったところに、慌ただしく足音が近づいてきた。
バタン!
「キヨ、一大事だっ!!」
「報告は正確、迅速、叫ばずに」
慌ただしくドアを蹴破ったジークムンドへ、溜め息をつきながら言い聞かせる。何度も言ってるんだぞ。内容を正確に、出来るだけ早く、無駄な枕詞を叫ばずに報告しなさい。学校の先生みたいな呟きを脳裏で繰り返し、口に出そうとしたオレよりジークムンドの方が早かった。
「孤児院の土地が取られた!」
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