187.調味料天国じゃん! 調達、調達ぅ!!(2)
「南の聖獣の主なら、契約したのと同じだ」
レイルが提供した新情報に、オレは「う~ん?」と奇妙な声を上げた。後ろでのしかかってるマロンが重い。後ろにいるマロンが南の聖獣だとして、聖獣と契約するのが王族なのか?
「マロン、この南の国の王族と契約した?」
『僕はない。だが土地の精霊は契約した。精霊より僕の方が上だから、覆せる』
簡単に覆していいものじゃないと思うが、契約はひっくり返せるようだ。もちろんオレは南の国を中央の国に統合する気はなかった。気候や作物に影響するからな。南で作られる味噌と醤油がなくなったら、次に来る日本人系転生者に殺されるぞ。オレも泣く。
「だったら、誰かを王族代わりに土地の精霊と契約させればいいんだ!」
閃いた! そんな感じで声を上げると、周囲から呆れ顔で溜め息を吐かれたうえで肩を叩かれた。しょうがない野郎だ、みたいな態度は解せぬ。うぬぬと唸るオレを、口角を持ち上げたレイルが興味深そうに覗き込んだ。
「おまえ、食べ物絡みだろ」
見え透いてるぞ。笑いを含んだ声につつかれ、オレは「何が悪い」と開き直った。食べ物は生きていくうえで重要だし、転生者にとって懐かしい故郷の味は……あああ!
「大変だ! お、奥さん……ちょっと教えて欲しい」
いきなりオレが勢い込んで尋ねたので、フライパンを教えてくれた奥さんがのけぞりながら頷く。
「この近所で……いや、遠くてもいい。味噌と醤油が大量に手に入る店を教えて」
「は、はぁ?」
驚きで間抜けな声を漏らした奥さんは少しすると肩を揺らして笑い、自分の胸を指さした。
「それならうちの実家が味噌を作ってるよ。醤油も蔵元に心当たりがある」
「本当!? やった!! 日本酒とみりんは?」
「みりんは知らないけど、コメの酒なら醤油屋が知ってるじゃないかねぇ」
奥さんの言葉をそのまま受け取ると、奥さんが味噌で醤油を知ってる。醤油は酒を知ってる。合ってる? ひとまず順番に回ることに決め、傭兵達の班長を集めた。
「ここで少し休憩。王都へ攻め込むけど、その前に食料品調達を行う。オレは味噌と醤油と酒をGETしてくるから、お前らは肉や魚を……あ、生魚見つけたらオレに連絡! 以上、よろしく」
『主様、キベリ調達しました』
足元から木の枝を引きずり出すスノーを抱き上げ、頬ずりして褒めると嬉しそうにチビドラゴンは尻尾を振った。持ち帰ったキベリは手早く収納へ放り込む。食べるのは後だ。まずは貴重な調味料の収集からスタートだった。
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