67.朝食の係もオレかよ! お前らいい身分だな(1)
起きたら捕虜がいなかった。別に逃げられたわけじゃなく、引取りの回収部隊が来たらしい。しかし何度起こしてもオレが起きなかったので、勝手にジャックがサインして引き渡したとのこと。別れの挨拶するほど親しくないので構わないが……。
「キヨ、朝ごはん」
なぜ期待の眼差しで皆が待ってるのか、そこが理解できない。この部隊で一番偉い上司はオレだよな? なんで飯炊き係になってるんだ!
「オレって上司だよな?」
「そうだぞ、腹減った」
この世界では上司が部下にメシを作って振舞う文化でもあるのか? いや、聞いたことないぞ。つうか……上司に作らせて待ってて食うだけなんて、お前らいい身分じゃねえか。
「はぁ……手伝える奴は手伝え。その方が早く食べられるぞ」
昨夜と同じ料理経験ありの連中が、手際よく肉を薄切りにしていく。隣に大量の野菜を積んで、ブラウを呼んだ。青猫は影から顔を出したものの、欠伸をして引っ込もうとする。慌てて首根っこを掴んで引きずりだした。
『主ぃ~扱いが酷い』
「煩い、サボり猫。野菜を昨日と同じサイズに切れ」
ぶつぶつ文句を言う巨大猫を引っ張って、視線を合わせて言い聞かせる。
「働かざるもの、食うべからず。契約解除するぞ」
『やだな、主。やらないなんて言ってないじゃない』
どっかのギャルゲのセリフか? 聞き覚えがあるのに、タイトルが出ないのでため息をついて放り出した。くるっと着地する運動神経は、本当にズルイと思う。まあ、ヒジリも猫科だけど。
「この鍋に放り込んでくれ」
お湯がぐらぐら沸く鍋を3つ並べる。昨夜は捕虜がいたからいいが、今日は人数が減ったので鍋もひとつ減らしておいた。余った後の鍋を収納した場合、零れるんじゃないかと不安なのだ。
今まで蓋のされていない水を収納したことがない。他の奴らが言うには平気らしいが、オレの収納魔法は少し違うから、着替えに鍋の中身をぶちまける可能性も否定できなかった。試す前に本番チャレンジは危険すぎる。
「味付けが塩だけとか……マジ飽きる」
料理チートを持ち合わせないオレが出来る味付けは、ハーブと塩だけ。これでは昨夜の塩味豚汁もどきと同じものしか作れない。豚肉じゃなくて、せめて鶏肉なら味が違ったかもしれないが、ない物強請りしても戦場じゃどうしようもなかった。
「ボス、塩以外の調味料が欲しいのか?」
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