11.拘束状態での拝謁(4)

 やばっ、オレ――めっちゃ美人じゃね? カミサマに頼んだけど、叶えてもらったのは知っているけど、それにしても美形だった。最初はあまり思わなかったが、明るい場所でちゃんとした格好するとイケメンだ。


 逆に、なぜカミサマが『向こうの基準で美形にしておくから』と目を逸らしたのかわからない。


 ……ん? もしかして、単にオレの感覚が異世界基準になったから美形に見えるけど、元の世界基準だと微妙、とか? 以前見たとき、ここまでイケメンだと思わなかったよな……疑問は疑惑へ変わるが、悩んでも結論は出ない。


 まあ、今の世界で美形ならいい。人生は美醜である程度左右されるのは、たぶんこの世界でも同じだろう。誰だって綺麗な顔してる方がいいし、お得だろう。




 改めて耳を確認する。


 焼いた痛みが証明するとおり、傷口は塞がっていた。出血はない。ちりちりした弱い痛みがなければ、元からピアスをつけてたみたいだ。


 紫の大きな瞳に色を合わせたのか、ピアスは紫と青だった。左は2粒、右も2粒だが……普通左右対称に位置を取る気がする。左は耳たぶの下のほうと少し斜め上なのに対し、右は耳たぶの中央に2粒がくっつく形だ。


 この位置、意味があるのか。



 失敗したとは思わなかった。だって、シフェルの耳のピアスも左右非対称だ。他の奴のピアスはじっくり見ていないが、魔力を制御する補助なのなら、複雑な意味が持たせてある可能性は高い。


「魔力が集まる部位を示しています。もう少し魔力が落ち着いたら、ピアスの数を増やしましょう」


「え?」


「嫌ですか?」


 増やすのは確定事項みたいに告げられ、ちょっと複雑な思いで頷く。


「嫌って言うか。オレのいた世界だと『親からもらった身体を損なうのは親不孝』って感じで、まあピアスもたくさん開けるのはあまり……喜ばれない」


 高校に入った頃、ピアスを開けたいと親に告げた。あの時は反対されて不満しかなかったが、今のように完全な親不孝の状態に陥ると、すごく悪いことを相談した気がする。


 親より先に死ぬのは最大の親不孝――だったらピアス穴くらい関係ないのだが、逆にこれ以上親不孝を重ねるのも……と躊躇ってしまう。


 もちろん親が今後ピアスの話を知る筈もなく、とっくに葬式を行われてる立場としては、自分の気持ちの整理だけなのだが。


「ピアスの数は実力を示します。魔力を制御する宝石は高額ですし、保護者の権威を示しますから」


「保護者の権威?」


「ええ、この世界で実力者は保護されます。誰に保護されるかで今後の人生が変わりますから、相手はよく吟味して選択する必要があります」


 ふーん……所謂パトロンみたいなのか。竜は希少種だと聞いたから、その関係で保護されるのかも知れないな。


 偏った知識の中で理解して頷くオレは、続くシフェルの言葉を聞き逃した。

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