11.拘束状態での拝謁(3)

 異世界転移って、生まれ変わりじゃないよな。どうして手足が短いお子様になってしまったんだろう。顔は変えてくれと頼んだ。確かに整った顔になっていたが、子供にしてくれと注文した覚えはない。


 小さくなった己の手をじっと見つめる。銃のトリガーもぎりぎりだし、こんな世界に子供の姿で落とすのは『やり直す時間を得るための温情』か、『何かの手違い』で縮んだのか。


「動かないでくださいね」


 後ろから耳を掴まれて一瞬で焼ける痛みが走る。


「痛っ」


「傷口は焼いておきますから」


 焼いておく……肉じゃないんだから。いや、肉だけど。肉だけど……違う。


 親切そうに言われても痛いものは痛い。右耳に走った痛みに顔を顰めている間に、左側も同じようにしまった。


 顔を顰めるオレの前に、手鏡が出される。その所作に見覚えがあって、凝視してしまった。手の指は消えないのに、間から物が出てくるこの感じ――収納魔法みたいなやつ!


「どうぞ」


 差し出された鏡を受け取りながら、「そういやノアに聞こうと思って忘れてた」と呟く。いろいろありすぎて、頭の許容量を超えた部分がはみ出してたらしい。最初に見た魔法らしい魔法に、異世界に来た実感が湧いて、ちょっとだけ頬を緩めた。


「鏡、どうやって取り出すの? どこにしまってあるんだ?」


 興味から尋ねるオレにシフェルは首を傾げ、納得したように頷いた。


「ああ、あなたの世界にはなかったのですね。戦い方を含め、すべてご説明しますよ……謁見の後に」


 にっこり意味深な笑みを向けられる。怖いが、説明を聞かずに1回失敗した為、拒否する選択肢はなかった。『竜』の特性を最初に聞いておけば、誘拐された時にもっと簡単に逃げられた筈だ。


 同じ失敗を繰り返す気はないので、ここは素直に応じる。


「わかった。後でな」


 ちくりと左耳が痛み、反射的に手を持っていく。指先が触れたのは冷たくて硬い感触だった。触れる先で、小さな粒が2つ程並ぶ。


「ピアス?」


「ええ、魔力を制御する補助になります」


 平然と言われて、手鏡を覗き込んだ。

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