202.灯台下暗し? 灯りをケチるな(2)

 唸ったとき、コウコが予想外の発言をした。


『主人は、聖獣の力が使えるじゃない。どうして物資に頼るの?』


 単純に疑問に思ったのだろう。その言葉を一度飲み込んで噛み砕き、もう一度唸る。あれ? もしかして聖獣の力が使えるなら……オレは治療が出来るんじゃ??


「誰も言わなかったから」


『だって主は聞かなかったじゃん』


『え? 知らなかったのですか? 主様』


 ブラウとスノーが首をかしげる。少し離れた場所にいるヒジリを手招きすると、渋々近づいてきた。コイツは絶対に確信犯だ。わざと黙っていたに決まってる。


「ヒジリ、オレはそんな話知らなかったけど……ヒジリが使ってる治癒はオレも使えるの?」


 具体的に逃げ場を封じて尋ねると、嫌そうに頷いた。つまり絆創膏もどきは無くても問題なし。ついでにヒジリに舐められながらの治療も拒否できる? 何それ、今まで損してた。


 治癒が自分で出来るなら、まさに灯台下暗し! 


「コウコのブレスに関して、オレは口から火を噴くの?」


 微妙に嫌だなと思いながら尋ねたら、首を横に振られた。蛇って肩がないから、首を振ると威嚇するコブラみたいで怖い。


『手でも足でも、体から出せるわよ』


 生物兵器じゃん。でも圧倒的火力が手に入ったら、武器がなくても平気か。いや収納で持ち歩いてるから使わないと思うけどね。あんまり人外な魔法を使うと、変な奴に目をつけられそうだ。


 くるくると毛先を弄りながら、長くなった髪を風で切り落とした。イメージはブラウが使う風の刃だが、すぱっと切れて少しだけ肌も切れた。こわっ……次から注意しよう。


 ついでなので、その傷をヒジリの治癒を思い出しながら指先でなぞった。じわりと濡れた温かい感触まで思い出して、背筋がぞっとする。また噛まれながら治療するのは嫌だな。要は聖獣の力を一時的に借りられる。だからオレが自分の魔力で自分を直そうとすると失敗するが、ヒジリの魔力を借りれば治る、でOK?


『主様、氷も! 氷もやりましょう』


「あ、うん」


 一通り試したのに水や氷がなかったので、スノーが必死にアピールした。水と氷は前から作れたから、聖獣の能力なのか分かりにくい。彼が満足すればいいと、氷の柱を作ってみた。ついでにイメージを膨らまして、人魚像みたくしたら感嘆の声が上がる。


「綺麗ね」


「すごい彫刻だ」


「溶けちゃうのかしら」


「もったいない」


 特に女性に人気だったので、帰ったら早速リアムにも披露しよう。にやにやしながら氷の像を眺めた。

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