18.裏切りか、策略か(13)

 ぴくんと肩が揺れた。なんだか、ひどく嫌な感じがする。目をうっすら開いて周囲を確認するが、異常は感じなかった。今度は目を閉じて気配を探る。うろうろ歩き回る廊下の男、部屋の入り口で監視にあたる兵、屋外を見回りする兵、魔力を頼りに人の動きを確認した。


 ひとつだけ、奇妙な動きをする魔力に気付く。揺れる感じが魔力を使用していることを示していたが、何をしているのか。ひとつ所から動かないのだ。揺れながら、でも近づいている感じがした。


 縦に近づいている? もしかしたらだけど、壁を上ってるんじゃないか。だから平面地図だと動かないが、近づいた気がするとしたら……。助けか、新たな敵か。


 ここの兵なら壁のぼりしなくても、普通に階段を使う。階段を使えないのに皇帝リアムに近づこうとする存在は、普通に考えて『新たな敵』だろう。だってオレの居場所をジャック達は知らない。助けに来るにしても、顔見知りを寄越す筈だった。


 知らない奴に「味方です、こちらへ」と言われ、バカ正直についていくような教育はされてない。ついてったら、シフェルあたりに「単細胞バカが」と舌打ちされること請け合いだった。


 うーん。この場合、当初の作戦を変更すべきだろうか。


 もし『敵の敵は味方』だったなら、付いて行けば中央の国に帰れる? 知れない。そのまま敵だとするなら、兵に知らせた方がいいよな。でも皇帝が自ら動くのはない。


 偉い人ってのは、のが当たり前。のは当然。危険があっても自ら首を突っ込まない生き物だ。オレがいそいそ動いて敵を排除しちゃったり、自ら戦うのは大国のなかった。


 中央との国境に近い西の首都へつく前に、暗殺とか仕掛けられるのも困る。リアムと勘違いされてる可能性から言えば、西以外の国に暗殺される可能性もあったな。



 え、オレ暗殺されちゃうの?



 突然どきどきしだした胸元を押さえ、もう一度魔力を探ってみる。かなり近い、明らかにこの部屋を目指してるよな。ほぼ真上……ん? 天井裏、とか?


 気付いた瞬間、咄嗟に身体を丸めてベッドの下へ転がった。


 ドスッ! 鈍い音でベッドの上に剣が突き立てられる。続いて、がらん…と天井板が落ちた音がした。


「あっ、ぶね!」

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