11.拘束状態での拝謁(7)
澄んだキレイな色だ。だから、少しだけ譲歩してやる。
「――陛下って、どんな人?」
12歳の外見を生かして、興味が逸れたように装う。子供らしい質問に、シフェルは一瞬だけ動きを止めた。気付かれちゃったか……と残念に感じながらも、彼が乗ってくれることを望む。
話せない機密を根掘り葉掘り聞くほど、精神は子供じゃない。もちろん、彼ならさらりと躱してみせるだろうが。
元の年齢(享年)は24歳だ。異世界でも大人に分類されるだろう。だから大人の事情ってのも、少し配慮してやれる。
「そうですね……」
そこで考え込むな。一言で「優しい方ですよ」とか「外見は怖いですが、云々」を期待したオレが怖がるだろ! 子供相手に詳細な説明なんか要らん。
「いろいろと規格外の方、です」
「きかく、がい…」
見た目? サイズ? それとも頭の中身? どこが規格から外れてるんだろう。部位によっては関わりたくないんだが?
本気で心配するオレが口元に運んだ指を齧っている姿に、シフェルも同情したらしい。もう少し言葉を選んで説明を付け加えた。
「いきなり殺そうとしたり、殴ったりしませんから安心してください」
さらに怖い説明だ。つまり、いきなり殺そうとしたり殴るような知り合いがいるんだな? お前には……。安心できる要素がない。
「……帰りたい」
出来るなら前の世界に帰りたい――切実な声色の呟きが零れ、噛んだ指に再び歯を立てる。
オレ、この世界で何年生きられるのかな……ふふっ。
遠い目をして現実逃避した間に、大きな扉の前に到着していた。
「近衛騎士団S隊隊長、シフェル・ランスエーレ殿到着です」
偉く立派な名前と肩書きで扉が開き、両側に立っていた衛兵が一礼する。
シフェルは当然のように足を踏み出した。まだ腕に座った状態のオレはそのまま連れて行かれる。降りなくていいのかと見回すが、誰も気にしていない。いや、見ていなかった。
正確には、部屋の中にいた高そうな服を着た連中――貴族か?――は奥へ頭を下げており、誰もこちらに注目していない。
グレーで無骨な印象の建物から想像も出来ない、美しい白い石を使った部屋は天井が高かった。よく大聖堂やホテルのロビーで見るような、数階ぶち抜いた高さだ。
上部が円形の塔になっているらしく、ガラス張りの天井から光が降り注ぐ。明るい室内をさらに眩しく彩る白が床と壁を覆っていた。勉強不足でわからないが、磨いた大理石っぽい艶のある表面が光を弾く構造らしい。
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